数理News 2001-1

東京大学大学院数理科学研究科      7月16日発行

編集: 広報委員会

数理ニュースへの投稿先: surinews@kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp

数理ニュースホームページ: http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews


目次


   

自由を我らに

   
研究科長 岡本 和夫

  あるフランス人が自由について論じた。自由ということを哲学的にはもちろんのこと、歴史的、政治的、経済的、ありとあらゆる観点から考察を加えた。その上で、自由には二つの異なる意味がある、という結論に達したという。この論文には自由ということの二つの意味を決して混同しないように精緻な議論が進められているという。この自信作を一読したイギリス人がつまらなそうに一言、freedom と liberty は違うに決まっているじゃないか。こんな話を学生時代に聞いたことがある。大して面白い話ではないのだけれどなぜか印象に残っていて時々思い出す。  何事につけ言葉の定義が重要であることはよいとして、確かに自由という言葉は人により勝手気ままな意味で使われることが多いようだ。新自由主義が語られ、競争原理の導入とか、説明責任、透明性の確保、いずれも大学を取り巻く世間から大学に対してもいわれていることではある。いずれも一見ごもっともなことばかりで、時には、お前は何なんだ、と聞いてみたい気もするけれど、攻撃者は自由の旗手であり、当方の申し分を聞かない自由を堅持しているから話にならない。自由は人の数だけその定義があるらしい。
 まじめに考えなくてはいけないことは、競争原理の導入が規制強化と裏腹に行われようとしている現実である。国立大学の法人化問題がどんな結末を迎えるのか、未だ予断は許さない。一方、先行して独立行政法人化した諸機関の話を聞くと、法人化によって獲得したものは自由と言う名の新しい規制強化であるように思えてならない。「あなたは自由です。だから私たちの要求に応じる必要はありません。私たちの要求に応じようと拒否しようと財政的には自立することができる自由が、あなた方にはあるのですから。」
 最近、競争原理の導入の名の下に、東京都立高校の学校群制度を廃止するという議論がある。結論の是非はともかく、これまで、学校群の名で行われてきた規制は何なのだろう。このことについては誰も責任はとらないということはまだしも、東京都の高等学校が学校群という制度のぬるま湯に使っていたことが問題であるとも言わんばかりの議論には腹が立つ。大学入試制度についても同じだ。某大学で起きた不祥事などで気分的には物が言い難くなっているが、とにかく入試を複雑にしたことが第一の原因である。このことは大学の勝手が招いたことであると言わんばかりの報道には腹が立つ。何に付けだれも責任をとろうとしない。腹を立てているばかりでは仕方ない。自由の話に戻ろう。
  以前、数学の試験に「ランチェスターの2乗法則について自由に論じよ」という問題を出したら、恐らく授業に出席していなかったと思われる学生が、「自由に論じろというのだから、自由について論じる」、という答案を提出したことがあった。自由についてなにが論じられていたのか全然覚えていない。多分注目すべき論説ではなかったのだろう。どんな成績を付けたかも忘れてしまった。
 これだけ自由に自由について書いた責任上、私の自由の定義を述べる自由を行使しよう。自由とは、自分で決め、自分で実行し、自分で責任をとる、ことである。こんな定義で政治的な自由はどうなるのだ、経済的な自由をどう考えるのだ、というような難しいことは聞かないでください。数学の世界で生きていくためにはこれで十分だと思っているのですから。とりわけ、自分で責任をとることができる自由、この自由を貫徹することができる数学という学問はすばらしい、と私は信じているのですから。そうです、私はたった一つの例外を除いてすべての面で自由です。たった一つ、時間の自由を除いて。           

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人事ニュース

(※平成12年12月1日以降の異動一覧です。)

教官

☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
13.4.1宮岡 洋一 大学院数理科学研究科 教授京都大学数理解析研究所 教授
13.4.1斎藤 義久大学院数理科学研究科 助教授広島大学大学院理学研究科 助手
☆転出
異動年月日氏名新官職旧官職等
13.4.1大鹿 健一大阪大学大学院理学研究科教授大学院数理科学研究科 助教授

職員

☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
13.4.1荻原 隆治教養学部等総務課課長補佐宇宙船研究所総務主任
13.4.1相川 光子教養学部等図書課数理科学図書掛 教養学部等図書課総務掛
13.5.16武藤 智子教養学部等総務課数理科学総務掛
☆転出
異動年月日氏名新官職旧官職等
13.3.31小杉 雄二定年退職教養学部等総務課課長補佐
13.4.1池澤 順教養学部図書課整理掛教養学部等図書課数理科学図書掛
13.5.31大室 佳奈辞職教養学部等総務課数理科学総務掛  

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新任教官紹介

 宮岡 洋一 教授

  2001年4月1日に京都大学数理解析研究所から転任してまいり ました。  以前駒場にいたのは学生時代、もうかれこれ30年前、学生運 動はなやかなりしころです。5号館7号館の汚さや生協食堂のま ずさはともかく、そのころと比べると駒場キャンパスもずいぶ ん変わりました。なんといっても一番めざましいのは、すこし離れ たところにある先端研でしょうが、二番手は数理の建物かもし れません。
 私の専門分野は代数幾何です。東大にはすでに川又雄二郎氏 をはじめ代数幾何の専門家はたくさんいるのですが、各人研究 の志向する方向は違っていますから、わたくしにも存在価値は ありそうです。現在は高次元の複素代数多様体を研究していま す。だんだん問題が難しくなる一方で困るのですが、複素多様 体論的観点(双正則幾何)や微分位相幾何的手法(概複素構造、 シンプレクティック構造)を、純代数幾何的な方法とからめて 用いることで新しい方向が開けてくるのではないかと考えてい ます。理論物理から発生した問題にも関心があるのですが、元 来のモチベーションはともあれ、代数幾何の立場から見ても意 味あることをやりたいものです。
 京都に在籍していた8年間は授業をもつ義務はなかったので、教 育現場での勘が鈍くなっているのではないかと心配して います。国立大学の法人化という大嵐が吹き荒れるなか、な にかとご迷惑をかけることもあろうかと思いますが、よろしく お願いします。         

 斎藤 義久 助教授
 2001年4月に広島大学大学院理学研究科から転任してきました。 もともと関東(千葉)の出身で、こちらに帰って来るのは9年ぶりです。 修士の2年間は数理に在籍していたのですが、名前があったというだけで 殆んどいなかったので実質東大は初めてです。
広島大学は数年前に郊外に移転したため、非常にのんびりとした環境の中に ありました。すぐそばに山があってイノシシやタヌキなども住んでいるような ところです。のんびりとした田舎暮らしに慣れてしまったせいか、 東京の人の多さとスピードには圧倒されています。
 専門は表現論です。中でも無限次元リー代数、量子群、代数群の表現を代数的、 あるいは幾何学的手法で調べています。これらの代数系は可解格子模型や共形場 理論などの数理物理の問題とも深く関わりあっています。最近は double loop Lie algebra と呼ばれる無限次元リー代数に特に興味を持っています。 無限次元リー代数のなかで有名なのは Kac-Moody Lie algebra や Virasoro Lie algebra などですが、 double loop Lie algebra はそれらとはかなり 違う性質を持っており、どこから攻略したらよいかわからないという状況の中で 試行錯誤の毎日を送っています。
 東大のような大きい大学のメリットの一つは自分とは専門が違う人の話を 多く聞ける機会があることだと思っています。僕自身もこのメリットを生かして 問題攻略のためのヒントを見つけることが出来たら、と思っています。 どうかよろしくお願いします。

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学生紹介

最近は東大数理でも留学生が増えてきましたが,そのほとんどは大学院生であり, 学部の留学生はめったにいません.現在数学科4年生にはモンゴルからの留学生, オトゴンバヤル君がいますので,彼に記事を書いてもらいました.

 オトゴンバヤル=ウーイェーさん
 こんにちは、学部4年生のオトゴンバヤル=ウーイェーです。
普段はオトゴーと呼ばれています。モンゴル出身で、日本に来てから 今年で5年目です。クラスで外国人留学生一人です。
1994年に高校卒業しましたがその時から日本に留学したいと思っていました。日本に国費留学生として来るのには日本の文部省の試験を受けなければいけませんがそれには12年間の教育が必要となります。しかし、モンゴルの教育制度は日本のと違って小中高校あわせて10年間なので大学に入らなければ受験できません。私はモンゴル国立大学理学部数学科に入り、2年生になった夏に上記試験を受て翌年の4月に来日しました。大阪外国語大学日本語センターでー年間日本語の勉強してから東大に入り理学部数学科に進学しました。しかし、一年間日本語を学んだとはいえ1,2年生の時はやはり言語の壁は厚く常に集中していないとわからない授業もあり大変でした。戸惑うことは沢山ありました。学部に進んだ頃には慣れてきて今はそれほど問題ありません、日本に来て良かったと思っています。4年のセミナーは、河東先生のところで作用素環の勉強をしています。皆さんこれからも宜しくお願いします。

 東大には,大学院生学術研究奨励金というものがあり,大学院生が海外の学会などに行く旅費を援助しています.情報は,
http://adm.ms.u-tokyo.ac.jp/groups/daigakuin/scholarshipJ.html
の一番下にもありますが,毎年,春と秋の2回締め切りがあります.数理は独立研究科として申請が通りやすくなっているので,ぜひ皆さんこぞって応募してください.去年の申請で通った勝良健史君(博士課程1年)の記事を掲載します.

 勝良 健史さん
 皆さんは,学術奨励研究金というのをご存知ですか?これは, 東京大学大学院の学生が国外で活動するときに給付される奨励金のことです.年に2回申請期間があり,次回は平成13年12月から平成14年5月の間の渡航に対する給付の申請が9月にあります.詳しくは,事務の方に聞くなり学内広報を見るなりして下さい.
 私はこの制度で去年アメリカのカリフォルニア州にあるバークリー(サンフランシスコの近く)に行ってきました.小学校のとき家族で台湾に行った以外は外国に行ったことがなかったので,ほとんど初めての海外でした.日本に帰ってきた後,たくさんの人に「英語がしゃべれなくて苦労したでしょ?」とか「ずっとアメリカにいると英語がうまくなったでしょ?」と聞かれましたが,答えはどちらもNoです.
まず最初の質問に関してですが,やはりアメリカに行った当初はいろいろ苦労しましたが,しばらくすると英語が片言でも生活できるということが分かりました.しかしそれに気付いてしまったため,自分からあまり英語を使わなくなり,結局長い間アメリカにいたにも関わらず英語がしゃべれるようになりませんでした.アメリカに行って良かった点は,有名な数学者にいっぱい会えたことと,同じ分野を研究している世界の友達ができたことです.アメリカへの渡航は,数学だけでなくいろんなことに対する視野を広げさせてくれました.
 皆さんも国外の研究集会などに参加したいなと思ったら,学術奨励研究金という制度を使って是非参加しましょう.そして,積極的に人に話しかけて,友人を多くつくりましょう.

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数理の行事

例年,数理では転任、定年の教職員のために3月送別会が行なわれています。
今年は3月23日に原宿で行なわれました。

平成13年4月20日新入生歓迎会
当日は、新入生はもちろん新入生を歓迎する先生・先輩方など大勢の人が集まり、 女性事務職員による手作り料理で盛り上がりました。

駒場キャンパスでは、自分たちの建物の周りを掃除する「環境整備」という行事があります。今年は5月28日に教職員・学生が参加して行なわれました。

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編集後記

  昨年度に引き続き、広報委員をしていますが、またしても海外出張が続き、佐藤さんにご迷惑をおかけしました。日本の夏はとっても暑いですね。
          
広報委員会
委員 河東 泰之
数理ニュース編集局 佐藤 真理子

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