数理News 2001-2

東京大学大学院数理科学研究科      2月1日発行

編集: 広報委員会

数理ニュースへの投稿先: surinews@kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp

数理ニュースホームページ: http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews


目次


   

節目の年

   
評議員 薩摩順吉

   数理科学研究科が創設されたのは1992年、今からちょうど10年前のことである。私自身は創設と同時に転任してきたので、その「産みの苦しみ」は話に聞くだけである。当時、大学は変革を迫られていた。一方では大学院の充実、他方では教養教育の変更。先人たち(といってもそのほとんどはまだ数理にいらっしゃるが)はそうした動きの中で全国に先駆けて数理系の独立大学院を構想されたのである。
 新しい組織を作るときには多大の仕事が要求される。人的配置、器となる建物のあり方などの他に、規則の制定、教育システムの整備などその項目の枚挙にいとまがない。できあがったものを評価するのは比較的簡単である。しかし、教育や研究は結果が分かるまでにかなりの時間がかかる。何十年というタイムスケールで判断すべきものと私は考える。
 本来10年もたてば組織は落ち着くものである。実際、建物もV期工事を残して一応の完成を見た。教育研究体制も整いつつある。これもひとえにスタッフの努力のたまものであるだろう。これで落ち着いて教育研究に励めればいいのだが、どうもそうはいかないようである。外圧が大きくのしかかっている。もっとも大きなものは、2年後に行われると取りざたされている独立法人化である。民間との共同研究などをより推進するために、大学組織を柔軟なものにするといったもっともな理由も挙げられている。しかしだから独立法人というのもよく分からない。英国の先例を見ると、予算の効率化がもっとも大きな理由のようである。かの国では基礎学問が大きなダメージを受けたとのことである。文系のある分野では壊滅した。すぐれた研究者はほとんど米国に流出したという話を聞いたことがある。
 数学は科学や技術を支える重要な基礎学問である。学問として2000年以上の歴史をもっている。研究科全体として数年毎の計画を立て、その進捗状況を評価されるというシステムは研究面では決してそぐわない。やるなら100年単位と言いたい。おそらく予算や人事についての評価が厳しくなるのであろう。
 基礎研究というのはすぐ目の前のことを考えてすすめるものではない。自身の経験でも、たまたまある論文で非線形方程式の解のグラフを書いたところ、10年以上たって実験で観測され、その分野で少々話題になったことがある。応用に役立ったのである。しかしはなから応用を意識していたわけではないし、結果もほんの小さな寄与である。本当に世の中に役立つかどうかが分かるのはもっと時間がかかる。独立法人が実現したとしても、教育研究において、目先のことだけを考えなければならないような状況だけは決してあってほしくないものである。
      

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人事ニュース

(※平成13年7月16日以降の異動一覧です。)

教官

☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
13.10.31Hietarinta Jarmo 客員教授トゥルク大学 教授
☆転出
異動年月日氏名新官職旧官職等
13.9.30WINKELMANN Jorg任期満了
13.9.28Arne JENSEN 任期満了
13.10.1加藤 和也 京都大学大学院理学研究科教授大学院数理科学研究科 教授
13.10.1小林 俊行京都大学数理解析研究所教授大学院数理科学研究科 助教授

職員

☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
13.9.1かんな内 純子教養学部等総務課数理科学総務掛
13.9.1片山 欣子教養学部等総務課数理科学総務掛
13.10.15坂田 その子教養学部等総務課数理科学総務掛
13.11.16小林 正史中核的研究機関研究員
13.11.16竹縄 知之中核的研究機関研究員
13.11.16安田 正大中核的研究機関研究員
☆転出
異動年月日氏名新官職旧官職等
13.9.30梅村 清子辞職教養学部等総務課数理科学総務掛  

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平成12年9月から平成13年9月まで客員教授として、東京大学大学院数理科学研究科で過ごした感想などをお話していただきました。

 Jorg Winkelmann 客員教授

 Nowadays scientists travel a lot and meet on conferences. In this way I became aquainted with Prof. Noguchi from Todai and we started to work together on joint projects,communicating by e-mail.
 This fruitful cooperation apparently was the reason that I got an invitation to go for one year to the University of Tokyo as Visiting Associate Professor, an invitation which I happily accepted.

 It was my first longer stay in an Asian country. Despite much talk about "globalization" in the newspapers people in one country often do not know much about other countries -- in fact little is known in Germany about Asia in general or Japan in particular. Encountering Japanese culture was a fascinating and rewarding experience for me.

I visited many places to give talks about my mathematical works (in Tokyo, Osaka, Nagoya, Kyoto and Nara) and on these occasions also learned a lot about the country.

Cooperating with Japanese mathematicians was very interesting and stimulating.

I want to express my gratitude to Prof. Noguchi and the University of Tokyo for inviting me, and to all the Japanese colleagues at Todai and other places which I encountered for their hospitality.

I hope that in the future there will be opportunities for me to visit Japan again.

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研究科所蔵の幾何学模型が総合研究博物館の展覧会 「真と贋のはざま―デュシャンから遺伝子まで―」展に出展

  本郷キャンパスにある総合研究博物館で,10月20日から12月9日まで,東京大学コレクションXII「真と贋のはざま―デュシャンから遺伝子まで―」展が開かれました。ご覧になった方もいらっしゃるのではないかと思います。この展覧会の展示のひとつとして,数理科学研究科が所蔵する,およそ百年前にドイツで製作された石膏の幾何学模型が出品されました。展示されたのは,ヤコビの楕円積分の模型と,クエン曲面など負の定曲率曲面の模型3点の計4点です。これらとあわせて,現在の技術で再現した曲面のCG画像をモニターによってタッチパネル方式で見ることができるようになっていました。

   今回の出展に際して,生産技術研究所池内研究所のレンジセンサーとよばれる装置によるレーザースキャンによって,模型の計測が行われ,模型のデジタルデータを得ました。これにもとづいて,曲面の定義式に含まれるいくつかのパラメータを選び,定義式から直接出力したものがモニターの画像です。レンジセンサーによる点列のデータと定義式にもとづくデータを比較することにより,模型が,かなり高度な精度で作られていることが確認されました。レンジセンサーで計測できる模型は,現状では限られているようで,種数の高い曲面など,穴があいているものは難しいようです。

 今回作成された画像ファイルは,展覧会終了後,研究科内でも何らかの形で見られるようにしたいと思っています。

(河野俊丈記)

    
(Kuen曲面の石膏模型(左)とCGによる再現(右))

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"Video Guest Book"へのお誘い


数理科学研究科では、数年前からマルチメディア情報をネットワーク上で取り扱うための設備の導入を進めてきましたが、それらの設備を活用するさまざまな活動の展開が始まっています。
ここでは、"Video Guest Book"と名づけている活動についてご紹介します。
本研究科には、毎年世界中の各地から多数の研究者が訪れています。これらの方々とは、集中講義やセミナーなどで学問的な交流を行っていますが、若い学生にとっては、なかなか近づきがたいのではないかと思います。そこで、これらの方々に、なぜ数学を志したのか、どのように研究を進めてきたのかなどのことを語っていただければ、若い人たちへの励ましとすることができるのではないかと考えました。が、せっかくのお話を、その場だけのものにするのはもったいなく、本研究科の設備を利用して、ネットワーク上でいつでもビデオ映像を見られるように準備することにしました。 これが、"Video Guest Book"です。
今までのところ、談話会でお話いただいた方に、数理の教官がインタビューするという形ですすめています。これまでにご登場いただいた方々は以下のとおりです。

1. 儀我 美一 氏(北海道大学大学院理学研究科) 
    聞き手:新井 仁之 氏
2. Bernard Shiffman 氏(Johns Hopkins Univ)
    聞き手:野口 潤次郎 氏
3. 向井 茂 氏(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
    聞き手:川又 雄二郎 氏
4. 岡本 和夫 氏 (東京大学大学院数理科学研究科)
   薩摩 順吉 氏 (東京大学大学院数理科学研究科)
5. 藤原 耕二 氏 (東北大学大学院理学研究科)
  聞き手:河澄 響矢 氏
6. 立木 秀樹 氏 (京都大学総合人間学部)
  聞き手:長谷川 立 氏

 いずれも、5 ~ 15分程度にまとめられ、気軽に視聴できるようになっています。これを見るには、数理棟内のネットワークに接続された、RealPlayerを実行することができるパソコン(WindowsまたはMacintosh、再生ソフトは無料で入手できます。以下のホームページからリンクが張ってあります)が必要です。ホームページ(http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/video/)をご覧ください。教職員の方は、主任室IIで視聴できます。

ボランティア募集中!


"Video Guest Book"や、その他のマルチメディア活動に参加するボランティアを募集しています。 活動内容は、
・ビデオ撮影、音声収録
・ ビデオ編集
・ホームページ作成・編集
などです。ビデオ撮影を行う際には、世界的な数学者と個人的な接触を持つチャンスがあります。また、数理には高度な編集作業が容易に行える編集設備があります。映像に興味のある方は腕のふるいがいがあります。経験のない人でも、簡単に習得できます。時間は自由です。
学習や研究の息抜きにもってこいです。
 関心のある方は、
・ video@ms.u-tokyo.ac.jpにメールする
・計算情報業務室(数理棟223号室)に行く
・一井(メールichii@ms.u-tokyo.ac.jpまたは内線49001)に連絡する
  のいずれかでご連絡ください。                            
(文責 一井信吾)

計算情報業務室からのお知らせ

・基幹メールサーバでのウィルス対策を開始しました。

急増するコンピュータウィルスの対策として昨年10月16日より基幹メールサーバへウィルス対策ソフト(IntestScanVirusWallトレンドマイクロ社製)を導入しました。このソフトは,基幹メールサーバを経由するメール(送信,受信とも)にウィルスが添付されているか自動的に検知し,メールにウィルスが添付されている場合は,ウィルス部分のみをメールから削除しその旨のメッセージを加えて受信者に送られます。

 <ウィルス削除後に加えられるメッセージ>
------------------ Virus Warning Message -------
添付ファイル名 is removed from here because it contains a virus.

導入後検知されたウィルスの総数は,約600通で大半が最近大流行の"ALIZ","BADTRANS"で占められています。
上記の件およびウィルスに関してご質問・ご相談がありましたら計算情報業務室までご連絡ください。
        

 


   

数理トピックス

   

今年も夏のビアパーティーが7月13日に行なわれ、恒例のすいか割では、見事命中。

平成14年度数理科学研究科修士課程入学試験が8月27日・28日(筆記試験)30日・31日(口述試験)行なわれました。  前日から職員が試験会場の設営を行ない、当日は、132名の志願者が試験に臨みました。  9月10日の合格発表(入学許可内定者)で45名(内外国人1名)が合格しました。   

公開講座「微分方程式で探る非線形の世界」が11月17日(土)約80名の参加者のもと大講義室で行なわれました。

  

平成14年1月11日(金)午後6時からコモンルームにおいて、研究科発足以来、恒例となっている数理科学研究科留学生交歓会が開かれました。
第9回目となった今回の交歓会には、13人の留学生とその家族、外国人研究員、教職員、元留学生、チューターら、総勢約70名が参加しました。
岡本研究科長の挨拶で始まり、有岡事務部長のスピーチ、留学生の紹介、留学生代表と元留学生のスピーチを交えながら、 和やかに食事歓談が続いた後、最後はビンゴゲームで大いに盛り上がりました。
留学生交歓会は留学生や外国人研究員と教職員が親しく懇談できるまたとない機会です。次回も多くの方々に参加していただきたいと思います。

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編集後記

  またしても私の怠慢によっていろいろ遅れていましたが,なんとか目標の年間2号に到達しました. ご協力いただいた皆様,ありがとうございました.(河東)
 無事2号が完成してほっとしました。(佐藤) 
   
          
広報委員会
委員 河東 泰之
数理ニュース編集局 佐藤 真理子

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