数理News 2002-1

東京大学大学院数理科学研究科      8月1日発行

編集: 広報委員会

数理ニュースへの投稿先: surinews@kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp

数理ニュースホームページ: http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews


目次


   

研究科長に就任して

   
研究科長 薩摩 順吉

 4月に研究科長に就任して4ヶ月たちました。これまで評議員をしていて研究科執行部の仕事は何となく理解していましたが、実際科長になるとその重みを痛感しております。評議員と研究科長の違いは判断にあります。比較的些細なことから重要なものまで、さまざまな事柄の決済を求められます。組織の長というのがどういうものかよくわかりました。
 大学とはどういうところでしょうか。現在2年後に予定されている法人化に向けてさまざまな書類を作成しています。というよりさせられているといった方がいいかもしれませんが。ともかくそのうちの一つ「ミッション・ステートメント」(案)を引用します。
 「大学院数理科学研究科の第一義的な使命は、数学や数理科学を国際的に支える人材を輩出することである。そのためには、学問の中核である数学の教育と研究を堅持するとともに、学問的な広がりを明示的に推進することが大切である。そのうち教育面については、東京大学全学、とくに前期課程数学教育に全責任を負っている。また、世界的にも高く評価される教育研究拠点であることが責務であるとともに、高度な数理科学研究情報の世界への発信基地となるように、システムやインフラの整備を進めて行かなければならない。」
 要するに、学生を世に送り出すことが一番の責任。教育はもちろんのこと、研究もそのための一つの要素となるわけです。最近、大学時代のクラスメートと歓談する機会がよくあります。大学で何を学んだのか。講義が大切なものであることは否定しませんが、それよりもセミナーでの議論や、同級生・先輩・先生とのさまざまな会話から得たもののほうがずっと大きかったというのが共通した意見です。
 大学院を含めて大学は高等教育機関と呼ばれています。初等・中等教育を経てもっとも高度なことを学ぶ場所であるからです。そこでの勉強はどのようなものか。近年「ゆとり教育」論議が盛んになっています。一つの主張として次のようなものがあります。「ゆとり教育で学力は低下しない。小中学校でゆったりしていたほうが、高校、大学で死にもの狂いで勉強するから、トータルで決着のつく話である。」私はゆとり教育反対論者であり、こうした考え方には賛成できません。初等教育では、基礎学力をつけることが重要です。国語や算数などは積み重ねの上に成り立っている科目です。基礎の土台をしっかりしておかないとあとでその上に積んでもきわめて脆いものになります。また積み重ねができる時期はいつでもよいというわけではありません。今年から導入された新指導要領を大いに危惧するところです。高等教育では、身についた基礎学力をもとに、社会に出て必要となる判断力、創造力を培います。これらは単に教えられて得られるものではありません。講義を聞き、本を読むだけでなく、皆といろんなことを話し合う中で作られていくものだと考えます。
 数理科学研究科はコモンルームという素晴らしい部屋を持っています。研究科の中だけでなく世界中から研究者が集まってきています。最近若い人たちはあまり議論をしなくなったといわれています。どんなことでもよい、議論することも一つの勉強です。その中から新しいアイデアが生まれることがよくあります。研究科では年4回コモンルームで教職員、学生、院生の懇親会を行っています。普段の講義やセミナーでは得られないものがきっと見つかるはずです。
 研究科の一義的な目標は学生を世に送り出すことと述べました。研究科長の仕事はしたがって、そのためになすべきことを考え実行していくことにあると思います。2年間精一杯頑張りますので、皆様のご支援ご協力よろしく御願いします。  

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人事ニュース

(※平成14年2月1日以降の異動一覧です。)

教官

☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
14.4.1大槻 知忠 大学院数理科学研究科 助教授東京工業大学大学院情報理工学研究科 助教授
14.4.1志甫 淳大学院数理科学研究科 助教授東北大学大学院理学研究科 助手
14.4.1関口 英子大学院数理科学研究科 助教授神戸大学理学部数学科 助手
14.4.1Yaroslav Pugai客員教授ランダウ理論物理学研究所

職員

☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
14.4.1山末 亜紀子教養学部等総務課数理科学総務掛文部科学省初等中等教育局教職員課
14.4.1佐藤 千春教養学部等図書課数理科学図書掛
14.4.1井上 敏子教養学部等図書課数理科学図書掛
14.5.1平山 千陽教養学部等総務課数理科学総務掛
☆転出
異動年月日氏名新官職旧官職等
14.3.31坂根 知子退職教養学部等総務課数理科学総務掛
14.3.31片山 欣子退職教養学部等総務課数理科学総務掛
14.3.31尾崎 三津子退職教養学部等図書課数理科学図書掛
14.4.1大槻 実希先端科学技術研究センター研究協力掛教養学部等総務課数理科学総務掛
14.4.1大西 由佳子医学部・医学系研究科図書受入掛教養学部等図書課数理科学図書掛  

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新任教官紹介

 大槻 知忠 助教授

  2002年4月に東京工業大学大学院情報理工学研究科から転任してきました。数理には助手のときに在籍していましたが、そのときは数理はまだ本郷に あったため、駒場キャンパスに在籍するのは学生のとき以来十数年ぶりです。
 専門はトポロジーで、とくに結び目と3次元多様体の不変量を中心に研究しています。結び目というと、かつてはその不規則的な現象を「げてもの」とおおもいになっていた方もおられるかもしれませんが、1980年代に数理物理的手法がトポロジーに導入されて以来Chern-Simons 理論を背景とする膨大な数の不変量が発見され、それらの不変量により結び目の研究はかなり規則的な取り扱いができるようになりました。私はそれらの不変量に興味をもって研究しており、それらの不変量をとおして結び目全体の集合の構造や3次元多様体全体の集合の構造をしらべる、という視点から3次元のトポロジーの新しい側面を開拓していきたい、とおもっています。

 ところで、ご存知の方もおられるとおもいますが、駒場キャンパスには裏門のわきに学内保育所があります。 先日長男がこの保育所を卒園し、長女は現在もお世話になっています。自然の中でおもうぞんぶんあそばせることを中心にこどもの自発性や自主性を大切にした良質の保育を維持しているユニークな保育所です (http://www4.ocn.ne.jp/~komabaho/index.htm)。みなさまには保育所に対するご理解をいただけますと大変幸いです。       

 志甫 淳 助教授
 2002年4月に東北大学大学院理学研究科から転任してまいりました. 駒場でお世話になるのは三回目で,一回目は大学に入学した時,二回目は博士課程在籍中に数理科学研究科が本郷から駒場へ引っ越した時で,今回5年ぶりに戻ってきたことになります.数理の建物は私のいない間に大きくなったのでなんだか不思議な感じがします.  東北大のある仙台は非常にゆったりした雰囲気を持つ人が多く,在仙中(←この言葉を東京で聞くことは殆どないであろう)はそれにやや漬かっていたわけですが,今東京に移ってきて5年前の頃の自分をだんだん思い出してきつつある所です.  専門分野は数論的幾何学で,主に標数p>0 あるいは局所体上の(対数的)代数多様体についての研究をしています.現在の研究内容はクリスタルコホモロジーを始めとするp進コホモロジーおよびそれらに対応する有理ホモトピー群の研究,対数的p進解析幾何の研究などです.数論幾何学は勉強すればするほどその広がり,奥深さを感じる分野であり,大変ではありますが,様々な話を聞く機会を持ちやすいという東大ならではのメリットを生かして研究分野を広げていきたいと考えています.それでは宜しくお願い致します.

 関口 英子 助教授
 2002 年 4 月 1 日に神戸大学理学部数学科から転任してまいりました.
 以前に東京大学にお世話になりましたのは大学院生の時ですが,当時は本郷のキャンパスでしたので駒場に通うのは初めてです. 今,駒場の数理科学研究科に通うようになって感じた第一印象は, 立派で機能的な建物や, 目には見えないけれども様々な新しいシステムが完成しているように思いました. 当時は学生でしたので何も気づきませんでしたが, 東大の数学科の先生方が大学院重点化の時お忙しくされていたのはこういうことのためだったのだなと思いました.
 私の研究のテーマは「高次元複素多様体における無限次元表現の構成とペンローズ変換」です. 自然なアイディアと地道な計算で何か新しい世界が見えればいいなと思って研究しています. 大学院に入学した頃のことを振り返ると学問の入り口に立ってその難しさに戸惑うことの連続でした. 緻密でパワフルな計算力でとことん一般化を追求される大島利雄先生と, 何もないところから次々に大きな理論を生み出し発展性のある新しい問題を続々と提起される小林俊行先生という二人の世界的権威である先生方が身近におられるという恵まれた環境の中で少し怖かったけれど,充実した学生生活を送ることができ,とても感謝しています. 教官として数理科学研究科に勤めることになって私自身は両先生のような役割はとても果たせませんが,美しいものを見て美しいと素直に感動でき,その中の一つを自分でもゆっくりと育てていけることができたらいいなと思っています.

 Yaroslav Pugai 客員教授
 I am from the Landau Institute of the Theoretical Physics, Russian Academy of Sciences.
 These monthes I am very happy to have a possibility to visit the Graduate School of Mathematics, which is one of the leading centers in the mathematical physics. Actually this is my third visit to Japan where I always enjoy by fruitful dicsussions with collegues and by excellent conditions for a work. Moreover, life in Japan itself, with studying elements of Japanese culture is very interesting for me. Several years ago my knowledge on Japan and Japanese was restricted to a standard set of many people, like kid's years tragic story on a girl who was making paper cranes to survive under leikomy after radiation, like movies by Kurosawa, or books by Kobo Abe and Haruki Murakami.
 Of course, I've read many classical works of Japanese scientists. It is funny, that among the first scientific books I bought in school were Landau-Lifshitz course and "Holonomic quantum fields" by Sato, Jimbo and Miwa. That time I just studied integral calculus and could not read them (and of course I could not think I will ever be in Landau Institute or will ever be in Japan and will see the authors of the latter book). However, in some sense science is international and one studies nothing on the country from Yukawa model or Toda chain. Last years the sitation changed for me drastically. Kyoto and Tokyo for me are no more "dots in a map", or "just cities situated in the vicinity of famous mathematical institutes"; I know now many streets, parks, beautiful shrines and, what is more essential, these are places where many friends of mine and many nice people live.

       

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数理トッピクス

14年3月29日 送別会が行なわれました。
・京都大学大学院理学研究科へ
異動された加藤和也先生
・京都大学数理解析研究所へ
異動された小林俊行先生

14年3月29日 修士課程・博士課程学位記伝達式が数理科学研究科大講義室で行なわれました。

平成14年4月26日新入生歓迎会が行なわれました。
数理科学研究科に新しく来られた事務職員の方々の紹介の後、今年も手作り料理でいつもの盛り上がりになりました。
後片付けも完璧!!

平成14年5月30日に教職員・学生が参加して環境整備が行なわれました。
 

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図書室からのお知らせ

 図書室(104)の資料がデータベース化され、 OPAC(東京大学総合目録)に入りました。

 利用者の皆様には、ご不便をおかけしていましたが、図書室(104号室)にある蔵書がデータベース化されました。 東京大学附属図書館の電算化が始まったのは、1986年。数理科学研究科発足以前から図書室では、入力を行ってきていました。 遡及入力(そきゅうという耳なれない言葉ですが、遡って資料のデータを作成していく)として始めたのは、1998年からです。平成11年度には、科研費での計画を出しましたが、採択にはいたりませんでした。幸い、平成12年度、13年度は、教育研究費をいただけることになり利用の多い資料から入力を行うことにしました。
この2年の作業は、業者に依頼する形をとりましたが、カードと現物図書の照合、書誌の細部に関する 事項確認など1冊ごとの確認作業には時間を費やすことになりました。 この間、利用中の図書をお返しいただくこともあり利用者の方々にはご迷惑をかけたこともありました。 結果、この作業で(酸性紙の資料や、手書き、海賊版などを除いて)ほぼ図書室所蔵分は、完了となり、カードを見ることも無くOPACから検索出来るようになりました。
今後は、保存書庫にある「元教養学部一研数学」と「基礎数学」の図書の遡及入力が、控えております。 有効利用のためには、データベース化を図り、多くの利用者に使っていただきたいと思っております。 今後ともご協力よろしくお願いたします。


   

計算情報委員会からのお知らせ

ビデオ関連機器の紹介

ご興味のある方は、計算情報業務室(223号室、内線47070)までお問い合わせ下さい。

1. 講義・セミナー録画システム

1階117,123教室および2階270教室にカメラとマイクが天井に設置されています。それぞれの部屋のカメラは、3階のビデオ機器室(302号室)より手軽にコントロールすることができ、映像はVHSテープ、DVテープ、DVDに録画することができます。

2. リアルタイム中継システム

ビデオ機器室に設置しているリアルサーバ、Windows Media サーバを使って、大講義室、117,123、270教室で撮影された映像をリアルタイムで中継することができます。 サーバの設定により中継の範囲を東大内、日本国内、全世界等指定することができます。

3. ビデオ会議システム

ビデオ会議カメラ(PCS-1600)を使って簡単に他大学とリアルタイムで音声・映像のやりとりができます。現在は、京大と北大にビデオ会議カメラを貸し出し、打ち合わせや談話会・研究集会の中継や等で利用しています。 他大学の談話会・研究集会の中継は、数理コモンルームや館内TV 9chで放映しています。

4. 映像編集システム

ビデオ機器室に映像の編集用PCを2台設置しています。 タイトルの作成や不必要な部分の切り貼りなど簡単な編集作業であれば10分程度で習得することができます。


編集後記

   数理科学研究科においても、いよいよ一般のメンバーにまで独立行政法人化へ向けた流れが現実のものとして感じられるようになってきました。あわただしさを増す今日この頃です。
 さて、四月に大槻知忠、志甫淳、関口英子の三氏が赴任してこられました。この三人の方々と、 客員教授として滞在中の Pugai 氏に専門分野や日々感じておられることなどについて書いていただきました。(舟木)
広報委員会
委員 舟木 直久
数理ニュース編集局 佐藤 真理子

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