数理News 2003-2

東京大学大学院数理科学研究科     1月20日発行

編集: 広報委員会

数理ニュースへの投稿先: surinews@kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp

数理ニュースホームページ: http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews

目次


   

21世紀COEと国立大学法人化

   
評議員 桂 利行

 21世紀COEに採択された本研究科のプログラム「科学技術への数学新展開拠点」がスタートして、約5ヶ月が経過した。そのプログラムの下、研究生が研究支援員として採用され、海外からのビジターによる講義も数多く行なわれているので、この制度にメリットを感じている人たちも多いはずである。

 「21世紀COE」というのは、もともとは「トップ30」という名前で遠山元文部科学大臣が発案した制度であり、日本の大学の30を世界のトップレベルに持ち上げるという考え方から始まっている。トップ30という呼び方はいかにも評判が悪く、21世紀COEと呼び名が変更された。国立大学法人化の時期とも重なって、日本の大学のレベルを考えてみる機会にもなった。マスコミは「大学はどこへ」(日経、平成11年)、「大学の力」(朝日、平成15年)、「本当に強い大学」(週間東洋経済、平成15年)などの特集を組み高等教育の分析を行なっている。平成12年には東京新聞が「国立大学が消える日」と題した特集記事を組んだ。その最終回となった2月18日付け朝刊では、「民営化や独法化を求める財界人や政治家たちの間で、大手を振って歩く『通説』の多くは、実は幻想にすぎない。」と述べ、日本の大学に対する悪しき先入観に対し、いくつか例を挙げて大学を擁護し、「政府は、本当に教育・研究の未来を見据えて、独立行政法人化しようとしているのか。」と疑問を投げかけている。世界の大学の発表論文数や論文引用件数が調べられ、日本人のノーベル賞受賞者が続くという追い風が吹いたことも手伝って、日本の大学も高い水準にあることを多少は宣伝できたのではないだろうか。

 21世紀COEは、採択された大学(グループ)にとっては、レベルをさらに向上させるための一助となろう。本研究科においても、リーダーの楠岡成雄教授の献身的なリーダーシップによって計画が順調に遂行されている。しかし、このプログラムは最長でも5年間であり、長期的なビジョンを立てるには短すぎる。各大学のプログラムが一斉に終わった時、研究支援員として中途半端に採用された若い研究者達は、それからあとどうすればよいのか何の見通しもない。

 現在の国立大学のシステムには、管理・運営には強いが新しい企画力に劣るといったような問題点があることは事実である。フットワークも決してよいとはいえないであろう。問題のある部分を改善し、より合理的なシステムに作りかえるのは大変結構である。社会へのアカウンタビリティーを果たすことも必要であろう。
しかし、毎年2%、10年間にわたって予算を削減し、総計約20%の予算削減を行ない、結果として、国家公務員の定員を20%削減するという、小淵内閣が打ち出した行政改革の方針をゴリ押しするだけの法人化であれば高等教育の行く末が危ぶまれる。「米百俵」の精神は、人材が第一という考え方のはずである。法人化によって合理化できるところはするとして、人材育成は国力の根幹であるという基本に戻り、長期的視野に基づく大学改革につなげていきたいものである。  

目次へ  


人事ニュース

(※平成15年5月15日以降の異動一覧です。)

教官

☆転入
異動年月日 氏名 新官職 旧官職等
15.10.1 Uwe Jannsen 大学院数理科学研究科 客員教授 レーゲンスブルク大学 教授
15.11.1 Thomas Geisser 大学院数理科学研究科 特任助教授 南カルフォルニア大学  助教授
16.1.1 林 高樹 大学院数理科学研究科 特任助教授 コロンビア大学     助教授
☆転出
異動年月日 氏名 新官職 旧官職等
15.8.1 石岡 圭一 京都大学大学院理学研究科 助教授 大学院数理科学研究科 助教授
15.10.1 谷島 賢二 学習院大学理学部 教授 大学院数理科学研究科 教授
☆昇任
異動年月日 氏名 新官職 旧官職等
15.7.1 吉田 朋広 大学院数理科学研究科 教授 大学院数理科学研究科 助教授

職員

☆転入
異動年月日 氏名 新官職 旧官職等
15.9.16 吉原 珠恵 教養学部等総務課数理科学総務掛  
15.10.1 鍛冶澤麻里 教養学部等総務課数理科学総務掛  
 

目次


新任紹介(教官)

  Ralph T. Geisser 特任助教授

  私の出身は、ドイツのWuppertalです。 Bonn大学でHarder先生に教わり修士課程を修了し、その後Müunster大学でDeninger先生に教わり博士課程を修了しました。三年間Harvard大学で過ごし、一年間ドイツのEssen大学で過ごして、半年間Urbana-ChampaignのIllinois大学で過ごしました。

落ち着く前に他の国に住んで見たかったので、 Saito Takeshi先生の誘いを受け1998年にJSPS fellowとして東京大学に来ました。

 日本に来る前は、日本についての知識はほとんどありませんでしたが、美味しい食べ物と親切な人々と東京大学の研究環境の良さで東京の生活がすぐ気にいりました。

 JSPS fellowshipを修了した後、USCからの助教授への誘いを受けて, Los Angelesに引っ越しました。今でも東京の生活が好きなので、授業の無い時期は日本で過ごします。現在は2004年の7月まで東京大学にCOE 特任助教授として来ています。


  U. Jannsen 客員教授

  My name is Uwe Jannsen, and I am Professor at the Department of Mathematics at the University of Regensburg. Before that I was Professor at the University of Cologne, and Research Professor at the Max-Planck Institute for Mathematics at Bonn. I studied Mathematics and Physics at the University of Hamburg. I am born in northern Germany, close to Hamburg, but Regensburg is a beautiful city at the Danube (Donau) in southern Germany, about 110 km northeast from Munich.

 My research interest is in number theory and algebraic geometry, and in particular I am interested in the cohomology of varieties over number fields and local fields, in algebraic cycles, and motives.

 Right now I am staying at the Graduate School of Mathematical Sciences of the University of Tokyo for the period of October 1, 2003 until March 31, 2004. My host is Professor Takeshi Saito, whom I know since many years. I am giving a course on 'Algebraic cycles and motives', and I am studying some conjectures in this field, in particular those related to finite-dimensional motives and nilpotence theorems. I am also continuing my scientific collaboration with my colleague Shuji Saito from Nagoya University, on the geometry and cohomology of varieties over local fields.

 I came with my family (my wife and four children), and we live in Yokohama, close to the German School Tokyo Yokohama which my children visit during our stay. They like the school very much, and we all are happy with the place where we live. We have been in Japan three times before (1992 for one month at Tokyo University, and summer of 1995 and winter of 1998, six months each, at the RIMS in Kyoto), and we like the country and the people very much.


新任紹介(事務室)

 吉原 珠恵 事務補佐員
 9月から数理科学研究科主任室Iに勤務しております吉原です。
平成9年度から平成11年度の3年間数理総務掛に勤務させていただきました。その節は大変お世話になりました。
また、この度は、週3日(火・水・木)の勤務とさせていただきましたので、皆様にはいろいろご迷惑をおかけすることと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。

  鍛冶澤 麻里 事務補佐員
10月1日付けで数理科学研究科総務掛のCOE担当事務員に採用されました、  鍛冶澤(かじさわ)と申します。大学での事務は初めてで、勉強させて頂くことばかりです。
 趣味は食べることで、特に甘いものが大好きです。何かとみなさまにご迷惑をお掛けするかと思いますがどうぞよろしくお願いいたします。

目次


   

21世紀COEプログラムの採択を受けて

   
拠点リーダー 楠岡 成雄
21世紀COEプログラムに数理科学研究科の提出した拠点形成の案「科学技術への数学新展開拠点」が採択されました(英語名は the 21st century COE program "Base for New Development of Mathematics to Science and Technology" です)。このプログラムは平成15年度より最長5年間平成19年度まで続きます(2年終わった時点で中間審査を受けます)。平成15年度は1億円の予算がつき、拠点形成特任教官2名、拠点形成特任研究員(ポスドク) 19名、特任アシスタント(RA)46名を採用しました。また、外国人を26名招聘します。このために COE 関連の講演や連続講義が多く行われていることはご存じだと思いますが、さらに2月16日〜24日には COEの予算で国際研究集会 "Arithmetric Geometry " が開かれます。また、ビデオ撮影編集の専門家も1名雇い入れることが出来、セミナー・公開講座・研究集会のインターネットによる発信や記録の作成整理が現在行われております。また、これらの活動の裏方として事務の方々が頑張って下さっていますが、事務体制を強化するため新たに3名の事務の方を雇い入れています。実は今、述べた活動に予算の90%以上が費やされています。
 数学においては、純粋数学・応用数学というように、応用を意識して作られたか否かにより数学の分野を区別するようなこともなされてきました。しかし20世紀後半におけるコンピュータの急速な進歩により、暗号、符号、乱数、数値計算、準乱数、最適化法などのように、様々な数学理論に基づいて作られた新しい手法が、実際の技術に直接に応用されるようになりました。今では純粋数学・応用数学といった区別はあまり意味のないものとなりつつあります。また、ファイナンスにおける確率解析のように、モデルを記述する道具として高度な数学が用いられる例も現れてきました。その結果(それが好ましいことであるかはともかくとして)数学的な内容を基本とした特許が認められるまでに至っています。このように社会における応用に密着した数学応用の研究の必要性が高まっています。
 しかし、数学の理論が創られてから応用されるまでに、30年、50年、100年といった長い時間がかかることも少なくありません。また、応用に役立った数学の理論も、必ずしも応用を目的として考え出されたものではなく、純粋に概念の思考的追求の結果であったことがよくあります。数学の研究においては、分野にとらわれず、すぐに役に立つか否かということを意識せずに、自由な雰囲気の下で研究が行われることが必要です。その一方で、応用に全く目を向けなければ、数学に対する社会からの期待に応えることはできません。
 今回のプログラムは以上のような基本認識の下に作られました。数学の研究教育については私たちには理学部数学科の伝統に基づく蓄積が既にあります。このため、私たちの拠点は数学応用にウェイトを置いた組織構成となっています。
 研究拠点は数学応用インターフェイス基地及び数学研究のための3研究部門(構造、非線形、大域)より構成され、戦略本部を置き、COE プロジェクト全体の統括、企画・立案を行います。戦略本部の下に、日本ではまだ数理科学として定着していない分野の研究班をいくつか作り、数学の社会への応用の可能性を探ると同時に、応用の視点から新しい数学の分野を生み出すことをも目的とし、数学と応用の接合を組織的に行います。現在、研究班としては、ファイナンス・アクチュアリー研究班、非線形現象研究班が立ち上がっています。数学では比較的若い時から大きな業績をあげる人が少なくありません。そのため、若手研究者の育成という点を最も重視しています。自立した研究者として多くのポスドクや RAが自由に精力的に研究を行えるような体制を作っていこうと考えています。  若い人たちが、真剣に研究・教育に取り組んでくれれば、必ずや成果が上がると信じています。COE プログラムはその活動を側面から色々な形で援助していくものです。数学・数学応用は、世間の人に目に見える形で研究・教育の成果を短期的に示すことが難しい分野です。日本の財政は世界最悪という危機的状況にあります。その中で科学技術研究の予算は増え続けていますが、いつ風向きが変わるかも知れません。数学研究の必要性を訴えていくには、その背後に数学の成果が必要です。これまで以上に研究・教育に取り組んで欲しいと思います。
 最後に来年度について説明します。来年度の予算額がわかるのは2004年3月頃といわれています。しかし、それを待っているわけにはいきませんので、既にポスドクについては公募を行いました。また、RA についても、本人の自覚を高めるために、研究科内の公募という形を取る予定です。来年度のD2, D3 については2月から3月にかけて、D1 については4月始めに行います。また、アーベル多様体についてのサマースクール、非線形現象に関する国際研究集会も計画されています。  

目次


   

Computer & Network : 最近の話題から



大講義室利用者へのネットワークサービス提供開始

 大講義室を利用して学会やシンポジウムを開催される方のために、ネットワークサービスを開始しました。大講義室・052号室・056号室の情報コンセントで利用できます。数理外の方も利用されることから、一般の居室や教室の情報コンセントからつながっている数理基幹ネットワークとはファイヤウォールによって分離しています。特に、ウィルスチェックを行っているほか、一般に利用されるメール、ウェブ等以外の通信はできないよう制御しています。利用したい方は、大講義室使用願を提出される際その旨ご記入ください。

情報基盤センター教育用計算機システム更新に伴う数理棟端末室閉鎖

 教育用計算機システムが今年度末に更新されますが、費用の関係から端末数が制限され、授業を行う予定がない場合には端末が設置されないことになりました。このため、数理棟1階101号室に設置されている端末は撤去されます。今後必要がある場合には、駒場図書館に設置される端末を利用することをお勧めします。なお、新システムでは15インチiMacが採用され、これまでとは雰囲気も使い勝手も一新されます。

数理ビデオアーカイブスの充実

 数理ビデオアーカイブスは、数理科学研究科で行われた談話会や講演会などを撮影した貴重な映像を中心に、数学に関するさまざまな映像を集めたライブラリーです。これまでも談話会や公開講座を中心にいろいろな映像を集積してきましたが、今年度COEのご援助を得て映像撮影・編集の専門家を雇用し、ますます充実を図っています。講義・研究集会・国際会議などを積極的に収録していきたいと考えていますので、ご協力をお願いいたします。なお、収録した映像は数理棟内で視聴できるほか、DVDやVHSビデオ等でお渡しすることも可能です。インターネットで公開することも可能です。(出演者に特にご了解をいただくことが必要になります。)

 また、アーカイブとして保存するほか、講演会などのライブ中継も行っています。国内主要大学は十分広帯域のネットワークで接続されていますので、高解像度の映像により臨場感ある中継を行うことができます。これまで、京大・北大・阪大などとの接続実績があります。接続先によっては多少の準備を要しますので、ご希望の方は早めにご相談ください。

 以上の内容について、ご意見・ご相談は計算情報業務室までお寄せください。

公開講座の映像より 対談収録風景

(文責 一井 信吾)  

目次


   

数理トピックス



平成15年7月18日夏の懇親会が行われました。
恒例、スイカ割りには、事務部長をはじめ、留学生、教官など声援の中挑戦しましたが、見事命中とは、いかなかったようです。

平成15年8月1日駒場キャンパスにおいてオープンキャンパスが開かれ 高校生が、模擬授業を体験したり、図書館などを見て回りました。

  

平成16年度 数理科学研究科修士課程入学試験が9月1日〜2日(筆記試験)、4日〜5日(口述試験)に行われました。

志 願 者:123名(内本学出身者26名、他大学出身者97名)
合 格 者: 39名(内本学出身者19名、他大学出身者20名)

幾何学賞 受賞者

平地 健吾 助教授
業績題目「強疑凸領域のベルグマン核の不変式論に関する研究業績」

また、東大数学同窓会の顧問で、元会長の伊藤清先生(1938年卒、京都大学名誉教授、専門は確率過程論)が、平成15年度文化功労者に選出され顕彰されました。
 (東大数理関係分)

平成15年9月30日、平成15年度修士課程・博士課程( 9月修了者)の学位授与式が行われました

平成15年10月7日、数学科進学予定者ガイダンスが行われました。ガイダンスでは先輩方が作成した、数学科を紹介したパンフレットも配られました。

平成15年12月6日 COE公開講座が開かれました。
今年度のテーマは「数理科学の広がり」

講演者:講演題目は次の通り 

・ラルフ ウィロックス(Ralph Willox)
組み合わせ論におけるウラム問題:パンルベ方程式の新しい応用
 

・長谷川 立
論理・計算・ゲーム

・楠岡 成雄
積分を計算する(整数論の数値計算への応用)

目次


編集後記

 国立大学の法人化を間近に控え、各部局は広報活動をよりいっそう充実するよう求められています。 このような状況をふまえ、数理ではホームページ(日本語版)を一新しました。一度ご覧ください。  http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/index-j.html (広報委員長・舟木直久)
 

 1号からだいぶ間があいてしまいましたが、今年度も無事、2号が完成致しました。 写真など提供していただいた皆様、ご協力ありがとうございました。(佐藤)

広報委員会
委員 舟木 直久
数理ニュース編集局 佐藤 真理子

目次