数理News 2004-2

東京大学大学院数理科学研究科     2月21日発行

編集: 広報委員会

数理ニュースへの投稿先: surinews@kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp

数理ニュースホームページ: http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews

目次


   

 

玉原の夢

         研究科長   桂 利行

  年が明けて、2005年がスタートした。年の始めは将来の夢を語るとき。この機会に数理科学研究科の施設に関する夢を3つ確認しておこう。

  第一は第3期棟の建設。特に図書館増築に関する部分は緊急を要する問題である。数学は紙と鉛筆があればできるといわれることがあるが、無から有が簡単に生じる程数学の研究は甘くはない。 独創性は、何もなくても天から突然降ってくるというようなものではなく、先人達の研究を踏まえて乗り越えるところから生じる。まずは学ぶ。あるいは知る。ここから出発せずして独創性を生む など少なくとも現在の世界第1線の数学研究においてはあり得ない。図書は数学研究のよりどころなのである。にもかかわらず、この生命線のためのスペースがなく、最も重要な雑誌のシリーズを 主閲覧室から書庫部に移動せざるを得ない等、やりくりに四苦八苦の状態である。これを早急に改善したい。また、セミナースタジオのためのスペースも現代的な教育・研究を実施していくために確保したい。
  第二は数学電網基幹センター(仮称)の設立。数理科学の教育・研究活動を効果的に行うためには、教育と研究に関わる教材や資料をデジタル化し、コンテンツの充実を図る必要がある。センターの設立によって情報アーカイブの体制を整備し、インターネットによる数学情報発信基盤を確立する。アカウンタビリティーが求められる今日、この計画には、社会への数理科学の情報発信の活性化を図るねらいもある。
  第三はセミナーハウスの取得。当初は山中湖にある農学部演習林の中に建設することが考えられていた。これは実現が難しそう、と思っていた矢先、財団法人森林文化協会から玉原にある研修施設寄付の話が持ち上がった。木造2階建ての立派なロッジである。この夢は、とんとんと実現に向って動いている。このまま順調にいけば、今年の7月に開所式が行えそうな勢い。場所は群馬県沼田市の北の山中。近くには玉原湿原があり、尾瀬からもそう遠くはない。たんばらスキーパークが近くにあるぐらいであるから冬は雪に閉ざされて使用できないが、夏はラベンダーの香りが楽しめそう。森と湖に囲まれた環境は数学をするのにうってつけである。玉原で胡蝶の夢を見て、数学の世界と現実を混同するほど数学に打ち込むもよし、邯鄲の夢を見て栄華のはかなさに数学への思いを新たにするのも一興である。ドイツのオーベルヴォルファッハ数学研究所をモデルにした研究施設に育てられれば、 日本の数学界にとっても有益であろう。玉原国際セミナーハウス。この計画は夢に終わらせず、是非成功させたいものである。皆様どうか御協力を。

 

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人事ニュース

(※平成16年7月1日以降の異動一覧です。)

教員

☆転入
異動年月日 氏名 新職名 旧職名等
16.9.1 儀我 美一 大学院数理科学研究科 教授 北海道大学大学院理学研究科 教授
17.1.1 J.Cheng 客員教授(H17.1.1〜H17.9.30) Fudan University  教授

職員

☆転入
異動年月日 氏名 新職名 旧職名等
17.1.1 芦田 寿子 教養学部等図書課数理科学図書係  
☆転出
異動年月日 氏名 新職名 旧職名等
16.12.31 井上 敏子
退 職
教養学部当図書課数理科学図書係
 

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新任紹介(教員)

  儀我 美一 教授

  数理科学研究科には9月に参りました。東大の駒場キャンパスに毎日通うのは約30年ぶりです。名古屋大学にて数年の勤務の後、北海道大学に18年以上勤務いたしました。自然環境の良い札幌から参りましたので、少し心配していたのですが、駒場キャンパスの近くは緑が割合多く静かなので、安心いたしました。また研究科の建物が広いためか、北大数学専攻に比べて静かな印象を受けました。
   さて、私の専攻は広く言うと解析学です。つまり、関数の極限や収束の問題を扱うことです。ある量が少しずれたとき、それに対応する別の量が少ししかずれていないかどうかという問題は解析学の典型的な問題ですが、日常生活上でもまた諸科学や工学上でも重要です。従ってその対象は多岐にわたります。解析学の中でも私は非線形微分方程式の数学解析を専門としております。
   流体の運動や結晶成長のような自然現象を記述したり、また画像処理のような工学的な問題を扱うために、さまざまな微分方程式が考案されています。私はそのような微分方程式のなかでも独立変数が複数ある方程式、つまり偏微分方程式のうち、特に非線形で拡散型の方程式を研究対象にして参りました。偏微分方程式が与えられた条件のもとで解けるのか、またその解の挙動を数学的に厳密にとらえることができるのかという点に関心を持ち、 お蔭様でこれまでいくつかの手法を提案することができました。現象を見つめることで、さまざまなタイプの数学上の問題が見出され、尽きることがありません。従いまして、北海道大学では数多くの若い方々が非線形偏微分方程式の分野に挑戦されてきました。本研究科でも、そのような方が多く現れることを期待しております。
   当面は北海道大学数学専攻のCOE(http://coe.math.sci.hokudai.ac.jp) の事業推進担当者としての業務も続けて参ります。 私の着任を機会に本研究科と北大数学専攻との交流が加速することを期待しております。


  Brown, Nathaniel 助教授

   My name is Nate Brown and I am visiting the Universityof Tokyo for one year. I arrived in June, 2004 and will return to my home university -- Penn State Universityin the U.S. -- next June. I am very grateful for the opportunity to spend this year here in Tokyo and thank everyone who made it possible.
 The University of Tokyo is a wonderful place for me to further my research program. In addition to be a general center of research activity in Japan it is also true that my particular area of research is well represented here in Tokyo. Indeed, Professor Kawahigashi is a leader in the field as is Professor Ozawa. Moreover, there are several postdocs and very talented graduate students in the area which make the University of Tokyo a fantastic place for my research. It is truly a privilege to spend the year here and, again, thank everyone at the university for their help and support.


新任紹介(事務室)

  芦田 寿子 事務補佐員

   

 1月より、数理科学研究科図書室で働かせていただくことになりました、芦田寿子(あしだ ひさこ)と申します。こちらに来てからまだ日も浅いので、職員の方すべてにはお会いできないでいる今日この頃です。なるべく早く、先生や職員の皆さん、そして学生さんたちの顔を覚えていきたいと思っております。どうぞ宜しくお願い致します。

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今年の 3月末で数理科学研究科を退職される薩摩 順吉 研究科長からメッセージをいただきました。

お 世 話 に な り ま し た

薩摩 順吉 

 駒場に来たのは13年前。最初は現在駒場図書館のある通称「第一研究室」に居室を持ちました。数年して基礎科学科のあった8号館に移り、1998年6月に第U期工事が完成し てからは、数理科学研究科棟の研究室に落ち着きました。しかし、3年前からはほとんどを研究科長室で過ごしています。結局、13年間で4つの部屋を仕事場にしてきたことに なります。

 そもそも1カ所に落ち着かない人間で、これまで住んだところは13カ所、長期に勤めた場所は4カ所、1ヶ月以上外国を訪問したのが8回ほど、ともかく動いているのが好き なようです。この原稿もモスクワ大学創立250年記念式典に出席してロシアから帰ったばかりの日に書いています。いろんな場所でさまざまな人に出会い、いろいろな考え方を 学び、多様な経験をする。ちょっと贅沢な生き方をしてきたかもしれません。数理科学研究科でもたくさんの人と出会い、これまでになかった経験もしました。数学 という息の長い学問をしておられる人たちの中にどっぷりつかり、研究に対する考え方も多少改めました。研究科長になってからは事務の方々との接触も多くなりました。その中 では仕事に対する姿勢というものを勉強しました。法人化された昨年4月以降は、私たちの仕事はいったい何なのかということを考えさせられました。しかしそうした中で、セミ ナーハウスを寄付して頂くという幸運にめぐまれ、忙しいながらも新しいものを作るという楽しい仕事も経験することができました。

4月からは、5つ目の職場で教育と研究に勤しむことになります。科長職を途中で辞するという結果になり、ご迷惑をおかけすることになりました。しかし、優れた方がたくさ んいらっしゃるからあとのことはまったく心配していません。私自身はこれまで数理科学研究科で培った経験を生かして、新しい職場の学生たちにささやかでも人生に役立つこと を教えていきたいと思います。

数理の皆様にはこれまで大変お世話になりました。数理科学研究科がいつまでも、日本のみならず世界の基礎科学教育研究の拠点であり続けることを期待して稿を終えます。 

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Computer & Network : 最近の話題から

数理ビデオアーカイブスとライブ中継について

 これまで数理ニュースで紹介しています『数理ビデオアーカイブス』プロジェクトは、多くの皆様のご支援によりいっそう充実してきています。ホームページ http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/video/  をぜひ一度ご覧下さい。

 また、記録目的のアーカイブスプロジェクトに留まらず、講演会やシンポジウムの生中継にも力を入れています。 H.323 方式テレビ会議システムを用いた中継では、最大4地点の相互中継も可能です。テレビ会議システム自体は大学等でも多く導入されていますが、セミナー等を中継する際にはそれなりの工夫が必要になります。これまでの経験の蓄積をもとに、他大学への技術指導も行っています。

 さらに、テレビ会議システムより高いクオリティのオーディオ/ビデオの伝送が可能な DV 方式による中継も、情報基盤センター等と協力しながら行っています。 11 月 13 日(土)には、平成 16 年度東京大学ホームカミングデイのイベントの一つとして、総長の講演及び加藤登紀子さんの講演・コンサートを本郷安田講堂から大講義室に中継しました。

 アーカイブ及びライブ中継に興味ある方は計算情報業務室までお問い合わせください。

  

     図 1 2004 年公開講座           図 2 オープンキャンパス 2004 薩摩研究科長挨拶

コンピュータとネットワークのセキュリティについて

 ウイルスや不正アクセスなどによるコンピュータとネットワークのセキュリティ問題は依然として深刻な情勢です。数理でも次のような事件が発生しています。

持ち込み PC でウイルス発生

事件  ビジターが Windows ノート PC を数理棟に持ち込み、基幹ネットワークに接続したところ、ウイルスが活動を開始してネットワークに多量のパケットを送信した。
対応  基幹ネットワーク監視装置で異常な活動を検出したので、ネットワークから切り離し調査。ウイルス対策ソフト未適用であることが判明。
教訓  ウイルス対策ソフトは必ず適用してください。また、ビジターや訪問者の方もこのことを徹底してください。                              

管理者不在コンピュータの不正利用

事件  大学院生室の Linux が動作しているコンピュータから、大量の不審な通信が学外に対して行われている。通信内容から、不正アクセスを受けて遠隔操作され、他のネットワークに対してアタックを行っていると見られる。
対応  ネットワークから切り離し、登録されている管理者を呼び出すが、実はその人は別の人(留学中で在外)から引き継いだだけで、詳しいことはわからない。
教訓  留学、転退任、退職などで不在になる場合は、単に root や Administrator のパスワードを教えるだけではなく、インストールされているソフトウェアや起動しているサービス、アカウントなどについて完全に引継ぎを行ってください。それができない場合は、廃棄するか計算情報業務室に引き渡してください。

著作権法違反の P2P ファイル交換

これはセキュリティというより情報倫理に関わる問題ですが、 P2P ファイル交換ソフトを用いてテレビ番組などのファイルを入手している例があります。著作権法違反となる行為を行わないよう、厳に注意が必要です。当然のことですが、教職員及び学生にとどまらず、訪問者の方も、このことを徹底する必要があります。なお、このような行為が行われないよう、ネットワーク上で P2P アプリケーションの動作を妨げる装置の導入を検討しています。

 学内で発生しているセキュリティ事件の教訓から、特に注意すべき事項について、 UT-CERT がガイドラインを発行しています。次の URL から参照できますので、参考にしてください。 http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/ut-cert/

 

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数理トピックス

●平成16年7月16日(金)コモンルームにて夏の懇親会が行われました。
  毎年恒例のスイカ割りで大いに盛り上がり、数学者でもある駐日ブルガリア大使 Blagovest Hristov SENDOV 氏も懇親会に参加され、学生に数学に関する問題を出題・解説していただくという嬉しいハプニングもありました。

 ●平成16年8月3日(火)駒場地区オープンキャンパスが開催されました。
多くの参加者が数理科学研究科を訪れ棟内の見学や、懇談会、模擬講義に参加しました。

  

●平成17年度 数理科学研究科修士入学試験が平成16年8月30日〜31日(筆記試験)、9月2日〜3日(口述試験)の日程で実施されました。

志願者 : 105名(内本学出身者35名、他大学出身者70名)
合格者 :  42名(内本学出身者24名、他大学出身者18名)

●平成16年10月5日(火)数学科進学予定者ガイダンスが行われました。
 

● 平成16年10月16日(土)〜17日(日)1泊2日の職員旅行が催されました。
旅行先は 群馬県沼田市周辺で玉原高原  朝日の森ロッジ の見学も行われました。

●平成16年10月28日(木)9:30〜11:30 消防訓練が実施されました。
目黒消防署指導の下、避難・消火訓練を始め、震度7程度の地震体験や煙体験等行われました。

  
                 

●平成16年11月23日(火) 2004年度数学公開講座 (21世紀COEプログラム 「科学技術への数学新展開拠点」)が大講義室にて開催されました。

 <講演者・講演題目>

  古田 幹雄
    目に見えないものの見方:序にかえて

  河澄 響矢
    空即是色?----モジュライ空間を考えるということ

  足助 太郎
    空間とその曲がり方について:曲面:多様体と曲率

  小島 定吉
    ポアンカレ予想が広げる幾何学の世界

●平成16年12月8日(水)教職員・学生が参加して環境整備が行われました。
 

  

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編集後記

今年度は数理の英語版ホームページを更新しました。まだまだ不備な点もありますが、多くの方々のご協力があってのことです。お世話になった方々に、この場を借りて御礼申し上げます。(舟木) 

広報委員会
委員 舟木 直久
数理ニュース編集局 平山 千陽

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