数理News 2007-1

東京大学大学院数理科学研究科     2007年9月10日発行

編集: 広報委員会

数理ニュースへの投稿先: surinews@faculty.ms.u-tokyo.ac.jp

数理ニュースホームページ: http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews/

目次


   

数理科学研究科の現状と課題

          研 究 科 長   桂 利行

 

 大学院数理科学研究科が設立されたのは 1992 年。大学院重点化にともなって数学教室が部局として独立するという驚くべき組織改革であった。設立と同時に東大数理に移ってきた私は、それからの数理の年月をつぶさに体験してきた。 1995 年に I 期棟、 1998 年に II 期棟が竣工し、 2006 年春には III 期棟の一部が建設された。設立当初は組織が不安定だったが、実務を司る実務委員会、学術を司る学術委員会の制度が 1995 年に確立され、現在では、その2つの委員会の機動性を生かしつつ、教育会議・教授会を最終決定会議、専攻会議を重要事項審議会議とする運営が定着している。一昨年には東京大学玉原国際セミナーハウスが群馬県沼田市の山中に設置され、数学の研究や教育の場として有効に活用されている。今後は、これらの施設、組織の充実を背景として、安定した発展が期待できると考えている。

 しかし、解決すべき課題も残されている。小宮山東大総長は東京大学の現状を詳細に検討し、アクション・プランを定めることによって東京大学がめざす方向を指し示しておられる。私は、東京大学の自立分散協調系の一翼をになう本研究科が行っていくべき課題は次の6項目だと考えている。

 (1) 若手研究者育成環境の整備
 (2) 教育・研究支援体制の整備、秘書室の機能化
 (3) 国際的連携の組織化
 (4) 広報活動の強化、情報発信体制の強化
 (5) 競争的資金獲得体制の整備
 (6) 第 III 期棟の建設

 詳細はここでは述べないが、活動を行うためにはとにかくスペースが必要である。若手研究者を新たに採用しても現在の状況ではまともな研究室を提供できないし、毎年 100 人を優に超えている海外からのビジターに対して現在は狭い3人部屋しか割り当てられないケースもあり、待遇改善が必要である。第 III 期棟は本来の数理棟建設計画に含まれていたものであり、できるだけ早急に建設実現を図り、本研究科の教育・研究活動がなめらかに行えるようにしたい。

 数理科学研究科が設立されて約 15 年。課題も多々残されているが、ようやく安定した組織をさらに発展させ、東大アクション・プランの目標である「世界の知の頂点」を念頭に置きながら教育・研究活動を展開していきたい。

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人事ニュース

(※平成19年3月5日以降の異動一覧です。)

教員

☆転入
異動年月日 氏名 新職名 旧職名等
19 .4. 1

小林 俊行

大学院数理科学研究科 教授

京都大学数理解析研究所 教授

19. 5. 1 本田 公 客員准教授( H19.5.1 〜 19.9.30 ) 南カリフォルニア大学 教授

☆転出
異動年月日 氏名 新職名 旧職名等
19. 4. 1

松本 幸夫

学習院大学理学部数学科 教授

大学院数理科学研究科 教授 (定年退職)

職員

☆転入
異動年月日 氏名 新職名 旧職名等
19. 4. 1 小林 幸恵 教養学部等総務課数理科学総務係  
19. 4. 1 山内 和美  教養学部等教務課数理科学教務係  
19. 5. 7 石川 里美 教養学部等総務課数理科学総務係  
19. 7. 1 安藤 京子 教養学部等図書課数理科学図書係長 国立情報学研究所情報資料チーム係長
19. 7. 1 久保 準一 教養学部等教務課数理科学教務係 医学部附属病院管理課経理チーム
☆転出
異動年月日 氏名 新職名 旧職名等
19. 6.29 長田 重信 教養学部等図書課付係長 教養学部等図書課数理科学図書係長
19. 6.29 武内 東子
教養学部等教務課教務企画係長
教養学部等教務課数理科学教務係主任
 

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新任紹介(教員)

 本田 公 客員准教授

今年の5月から9月までお世話になります。本職はロサンゼルスにある University of Southern California の教授です。 専門は低次元トポロジーとシンプレクティック幾何学です。主に接触構造の研究をしていますが、関係あるもの( Floer Homology) 、あるいはありそうなもの ( 特に Khovanov Homology 、量子場の理論、 超弦理論 ) にも少しずつ手を出しています。滞在中には幾何学の学生さんと議論するのを楽しみにしています。 どうぞよろしくお願いします。

※小林 俊行教授の新任紹介は次号に掲載予定です。


新任紹介(職員)

  安藤 京子 図書係長

 7 月 1 日付けで、国立情報学研究所情報基盤センターから異動してまいりました 安藤京子と申します。駒場での仕事は十数年ぶりです( 8 号館にあった教養学科図書室におりました)。
 まだキャンパスの変貌にも人口の多さにも戸惑う毎日ですが、これからしっかり研究のサポート役を務めたいと思っています。よろしくお願いいたします。


 

  久保 準一 教務係員

 7 月 1 日付で、医学部附属病院管理課から数理科学教務係へ配置換となりました久保と申します。かねてから教務関係の仕事を希望していましたので、こちらに配属されたことを大変嬉しく思っております。分からないことばかりですが、今後が楽しみです。また駒場キャンパスは緑が多いおかげで、空気がきれいだと感じています。まずは、一日も早く皆様の顔と名前を覚えて仕事に慣れていきたいと思います。皆様のご指導のほどよろしくお願いいたします。

 
  小池 法子 派遣社員

  1 月 29 日 より派遣社員として主任室でお仕事をさせて頂いております。現在は大学生として勉強の傍らボランティア活動などしております。皆様のお役に立てますよう頑張りますので宜しくお願い致します。 (詳細は 2006 − 2 号の人事ニュースをご覧下さい)


  小林 幸恵 事務補佐員

 4 月 1 日付で採用になりました小林幸恵と申します。 再びお世話になることになりました、よろしくお願い致します。以前と同じ主任室で数理紀要の編集を担当させて頂きます。至らぬ事もたくさんあったとは思いますが、同じ席に着けたことに感謝しております。
 新しい気持ちでお役に立てるよう頑張りますので、ご指導の程よろしくお願い致します。


  山内 和美 事務補佐員

 4 月 1 日付けで、当研究科、教務係に採用されました、山内和美と申します。
不慣れなもので、皆様にご迷惑をおかけしているかと思いますが、頑張って まいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


 石川 里美 派遣社員

5 月 7 日より、野口潤次郎先生の研究室に勤務しております、石川里美と申します。 早く仕事に慣れ、皆様にご迷惑おかけしないようにしたいです。 どうぞ、宜しくお願い致します。

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高木レクチャーが東大で開催されました  

小林 俊行

類体論を確立した世界的な数学者であり、近代日本の数学の礎を築かれた高木貞治先生(本学教授 1904 − 1936 )のお名前を冠した講演会「高木レクチャー」が 5 月 26 日(土)・ 27 日(日)に本学数理棟大講義室で開催されました。 世界から 3 人の国際的数学者、ネーブ教授(独)、ヴォイクレスク教授(米)、ヨール教授(仏)が講演者として招かれ(写真2)、 2 日間にわたって壮大な数学理論の連続講演が行われました。講演会初日には招待講演者があらかじめ執筆した予稿集(写真1)が参加者に配られました。この日の朝、桂利行研究科長と私は高木先生の銅像を図書室から大講義室におそるおそる運び入れました.土・日にもかかわらず 100 人以上の聴衆が集まり、会場は熱気につつまれました(写真5)。 講演の様子は東京大学数理 Video Archives Project チームが撮影し、京都大学数理解析研究所へのテスト中継も行われました。

  「高木レクチャー」は、世界的に卓越した数学者を講演者として招聘し、気概に満ちた研究総説講演を専門分野を超えた数学者が聴くことにより、自由な創造のインスピレーションを引き起こし、新たな数学の発展に寄与することを目指した企画です。とりわけ若手研究者・大学院生・学部生など感受性の強い人たちに、とびきり良いものに接する機会をもって欲しいという願いもこめられています。 

高木レクチャーは、 80 年の歴史をもちながら 2005 年に廃刊の危機に陥った欧文学術誌 Japanese Journal of Mathematics ( JJM 、写真4) が、背水の陣をしいて起死回生をはかろうとする中で発案されました。数学者の名前ではじまる定期的な冠講演会は日本で初めてであり、検討が重ねられた後、 2006 年春に日本数学会で正式に創設が決定されました。組織委員は JJM 新編集委員の 小野薫・河東泰之・斎藤毅・中島啓の各教授と私で、さらに日本数学会の前々理事長の森田康夫教授・前理事長の小島定吉教授が日本数学会における担当理事として支援してくださっています。 高木レクチャーは、日本数学会のほか、国際数学者会議 (ICM90) 記念基金、 Japanese Journal of Mathematics 、京都大学数理解析研究所 (2006 年 ) によって支えられており、今回は東京大学大学院数理科学研究科( 2007 年)が主催校になりました。

(写真1) (写真2)右からVioculescu教授、同夫人、Yor教授、Neeb教授

 (写真3)桂利行研究科長によるスピーチ (写真4)

さて、定期的に行われる数学の講演会には、ヘルマン・ワイル・レクチャー、ブルバキ・セミナー、サックラー・レクチャーなどがあります。このような講演会は、そこに招待されて講義を行うことが、講演者に誇りと栄誉を感じさせるような権威ある催しとなっています。日本発信の高木レクチャーもまた、そのような講演会の1つとして世界に貢献することを願っています。ところで、今回の高木レクチャーでは、高木貞治先生の銅像を教壇の左手に、彌永昌吉先生(本学教授 1942 − 1967 )の額装写真を教壇の右手に配置し、お二人に見守られながらのレクチャーとなりましたが、このお二人はいずれも明治生まれの国際人であり、数学の国際賞として最も栄誉のあるフィールズ賞の選考委員も、高木先生は 1932 年に、彌永先生は 1970 年に務められています。

 これまでの高木レクチャーの招待講演者は次の通りです。

2006 秋 ブロック(シカゴ大学教授)
      リオンス(コレージュ・ド・フランス教授)
      スメイル(豊田工大シカゴ校教授・シカゴ大学教授)
      ヴォアザン( CNRS 教授)
2007 春 ネーブ(ダルムシュタット工科大学)
      ヴォイクレスク (カリフォルニア大学)
      ヨール(パリ第 6 大学)

 高い理想をかかげて始めた高木レクチャーですが、その実行は関係者各位の目に見えない献身によって支えられています。高木レクチャーという催しで私が期待していることの一つは、 知識や専門にとらわれず 「とびきり良いもの」「オリジナルなもの」「素晴らしい創造」に、参加者の方が 和やかな雰囲気で じかに接せられることです。この効果を高めるために、ふつうの研究集会よりも休憩時間を長くとり、また、お茶やケーキの時間やワインパーティの場(写真7)を設けるなど、参加者や講演者が分野をこえて自由に歓談する機会をより多く持てるようなプログラムになっています。

今回の高木レクチャーでは、高木貞治先生の高弟で昨年 6 月 1 日に亡くなられた彌永昌吉先生を偲び、東大数学同窓会楠岡成雄理事長から、彌永昌吉先生が 100 歳で JJM に出版されたフランス語の論文の別刷も参加者に配られました。

 

(写真5) (写真6)ヨール教授講演の座長をつとめる楠岡成雄教授

 (写真7) (写真7)


研究ニュース 

確立過程に対する漸近展開理論、統計推測理論の研究とその応用(PDFファイル)
日本数学会2006年度解析学賞受賞 吉田 朋広 教授

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計算情報委員会からのお知らせ 

数理ビデオアーカイブスプロジェクトの紹介

 

数理ビデオアーカイブスプロジェクトは、 2000 年 10 月より数理科学研究科で開催される講義や研究集会などの講演を中心に、数学に関するさまざまな映像をライブラリーとして永久保存することを目的に活動を開始しました。

これまで 400 本近くの映像を収録し、その映像のほとんどは数理ビデオアーカイブスのホームページで RealVideo, WindowsMedia のストリーミング形式でインターネット公開されています。

 

◎ 収録映像の内訳 (2007 年 8 月現在 )

カテゴリー

収録数

主な対象

ビデオゲストブック

55 本

学部 1 , 2 年生

数学公開講座

13 本

一般

オープンキャンパス

8 本

高校生

高校生のための現代数学講座

24 本

高校生

数理談話会

43 本

専門の異なる大学院生・研究者

講義

56 本

学部生

講演会

4 本

学部生

特別講義

40 本

大学院生

特別講演会

7 本

大学院生

研究集会

129 本

研究者

 

◎数理ビデオアーカイブスのホームページ URL

http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/video/index.html

 

これから数学者を志す人に向けた対談形式の「ビデオゲストブック」や著名な海外の数学者の講演を収録した研究集会など貴重な映像がたくさんそろっていますので、是非ともご活用ください。

数理ビデオアーカイブスプロジェクトについてご意見・ご希望がありましたらメール ( video@ms.u-tokyo.ac.jp ) または計算情報業務室までご連絡いただければと思います。

最後に、 2003 年 10 月より21世紀 COE プログラム「科学技術への数学新展開拠点」の支援を受け専属ビデオスタッフとして働いている、いまや数理ビデオアーカイブスプロジェクトの活動にはなくてはならない東さんの紹介をしておきます。

 

 

こんにちは、 COE ビデオスタッフの東正明と申します。麻生助教の下、映像技術会社から数理に技術スタッフとして常駐するようになってから4年、最初は戸惑うこともありましたが、よい先生方、スタッフの皆様に囲まれ、最近はすっかり数理に馴染んだのかな、と実感できるようになりました。

数理でビデオ技術者というと、ちょっとへんてこりんな存在に感じるかもしれませんが、裏方として数理ビデオアーカイブスのコンテンツ作りや大講義室の映像音響設備の運用など、忙しきことは嬉しいことで、私自身はとてもやり甲斐のある仕事だと思っております。

数理ビデオアーカイブスでは、レギュラーコンテンツとして談話会や公開講座、一般講義などの撮影編集を行っておりますが、その中でもオリジナルコンテンツとして、ビデオゲストブックという番組を制作しています。ビデオゲストブックは主に談話会で招かれた先生を中心に、数理に訪れた先生に対してインタビューを行う番組で、学生の皆さんに見ていただくことを主眼に入れ、少し砕けた話をざっくばらんに話していただいています。ゲストの先生の普段とは違った一面や本音も聞けることが多く、もし興味があれば是非御覧下さい。

 

   

 

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数理トピックス

●平成19年2月16日(金) 談話会にて平成19年3月31日に退職された松本幸夫教授の講義が行われました。

   

 その約1ヵ月後の平成19念3月26日(月)、原宿の「南国酒家」にて松本先生の送別会が盛大に行われました。

   


●平成 19年3月22日(木)修士課程・博士課程学位伝達式が数理科学研究科大講義室で行われました。

    平成18年度修士課程修了者 : 38名
    平成18年度博士課程修了者 : 16名 (9月修了1名をのぞく)   

   

●平成19年度4月5日(木)修士課程・博士課程入進学式が大講義室で行われ、桂 利行 研究科長、片岡 清臣 専攻長、来賓として藤田 宏 東京大学名誉教授より祝辞(PDFファイル)を賜りました。

   平成19年度修士課程入学者   : 44名  
   平成19年度博士課程入進学者 : 17名

 

● 平成 18年4月20日(金)コモンルームにて春の懇親会が行われました。

  

●平成 19年 6月13日(水)教職員・学生が参加して環境整備が行われました。

                              

●平成19年7月9日(月)コモンルームにて夏の懇親会が行われました。お天気は曇りでしたが、恒例のスイカ割りですっかり真夏の雰囲気に。

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編集後記

遅い梅雨明けと猛暑は予想外でした。このニュースが皆様のお手元に届くころはもうすこししのぎやすくなっていると期待します。温暖化、サブプライムローン焦げ付き、それと、いろいろな業務による研究時間の減少は大きな問題です。(吉田)

広報委員会
委員長 吉田 朋広
数理ニュース編集局 池田 千陽

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