数理News 97-2

東京大学大学院数理科学研究科      2月13日発行

編集: 広報委員会

数理ニュースへの投稿先: surinews@kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp

数理ニュースホームページ: http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews


目次


   

数理科学研究科第U期棟使用開始

   

 数理科学研究科第U期棟は、 2 月末に竣工のはこびとなりました。 3 月中には建物周辺の工事も終わり、新年度から本格的に運用できるようになります。第U期棟には、現在の第T期棟の 1 階から 5 階の続きと 0 階の部分があります。(第U期棟は 6 階建てですが、部屋番号を各フロアの通し番号とするため、 0 階から 5 階と呼びます。)第U期棟の 2 階から 5 階の部分は 2 月 10 日から使用可能となり、 2 月 10 日、 11 日に新規購入した什器を搬入、 2 月 12 日、 13 日に第一研究室棟から、第U期棟の 2 階から 5 階の部分への移転作業が行われました。いよいよ第U期棟使用開始です。(建物周辺の工事が終わるまで、トイレ、洗面台等水周りのものは使用できません。 0 階 1 階部分の工事が終わるまで第U期棟のエレベーターは使用できません。) 2 階から 5 階の第U期棟、第U期棟のつなぎの部分にはラウンジスペースがあり、喫煙が可能なスペースとなる予定です。その隣には、(現在第T期棟の端末室にある)カード用コピー機、ネットワークプリンタ、(現在第T期棟の計算機演習室にある)公共端末を置く小部屋が出来ます。また一番東側には、第T期棟の端末室に対応するネットワーク室があり、第U期棟の情報配線の縦系を構成しています。第U期棟の2階から 5 階のその他の部屋は、各階のセミナー室 1 室および 2 階のいくつかの部屋を除いては教官と大学院生の研究室で、第T期棟の 3 階から 5 階の研究室と同じような仕様になっています。使用できるのは 3 月中旬以降と思われますが、第U期棟の 1 階部分には新しい研究科長室、会議室、資料室、セミナー室が配置されます。また、 0 階部分には大講義室、講義室、演習室があり、国際会議等に非常によい環境を提供するものとなります。 0 階 1 階部分の空間構成が今回の第U期棟工事の最も魅力的なところです。 0 階 1 階が完成し研究科長室を移転した後、第T期棟の現在の研究科長室(219)は、第U期棟の 2 階の 254 号室とともに、主任室として、研究科の運営のための部屋として使われます。とくに、現在の研究科長室では、非常勤教官を含めてすべての教官とのコンタクトが取り易くなるように運用される予定です。                   

(坪井 俊 記)

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人事ニュース

(※平成9年4月16日以降の異動一覧です。)

教官

       
☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
9. 8. 1 Zhang Qi 大学院数理科学研究科助教授 ミズーリ大学助教授
9. 10. 1 中村 周 大学院数理科学研究科教授 名古屋大学大学院多元数理科学研究科教授
9.10.16 麻生 和彦 大学院数理科学研究科助手京都大学理学部技官
9.11.16 一井 信吾 大学院数理科学研究科助教授(大型計算機センター助教授併任) 大型計算機センター助教授
☆転出
異動年月日氏名新官職旧官職等
9.9.30 中村 博昭 東京都立大学理学研究科助教授 東京大学大学院数理科学研究科助手
9.9.30 Balandin,Alexander Leonidovich 任期満了 
9.10.1

斎藤 秀司

東京工業大学理学部教授 東京大学大学院数理科学研究科助教授

職員

☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
9.9.16 深澤 祐子 教養学部等総務課数理科学総務掛主任 教養学部等経理課司計掛主任
☆転出
異動年月日氏名新官職旧官職等
9.9.30 柳川 香絵 辞職

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受賞ニュース

小林俊行さん、川向洋之さんが建部賢弘賞を受賞
  昨年9月30日より10月3日まで、東京大学駒場キャンパスにおいて開催された日本数学会1997年度秋季総合分科会におきまして、当研究科の小林俊行助教授と研究生の川向洋之さんが建部賢弘賞を受賞されました。小林さんの業績は、等質空間の調和解析の研究に関するもので、川向さんの業績は、パンルヴェ方程式の多変数化に関するものです。

数理科学研究科第T期棟が文教施設部長賞を受賞
  平成 7 年 8 月に竣工した数理科学研究科第T期棟は、平成 8 年度国立学校優秀施設として、施設部が文教施設部長賞(計画部門)を受賞しました。今後の大学院研究棟のひとつの新しい型のモデルとして高く評価されたものです。

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新任教官紹介

 加藤 和也 教授

 1年生の線型代数の講義で、 4 次元、 5 次元のベクトルを説明しながら、 6 次元将棋の楽しさや、 98 次元世界の回転木馬の楽しさを話したところ、学生諸君が喜んでくれたのがうれしかった。また、日本の昔話の心と数学の心が同じであること(いずれも「永遠」と通ずるところがあるなど、多くの点で似ている)を話したところ、学生諸君がうなづいてくれたのがうれしかった。受験勉強で頭が硬くなっているかもしれない東京大学の学生諸君に、そういうことを話せるのは大きな喜びである。私の研究分野は数論である。数の世界のふしぎさにふれる喜びや、ふしぎさにふれることで湧いてくる「ゼータ笑い」(素数の世界から生まれ出る「ゼータ関数」というものを見ていて、この世にはふしぎなものが存在するのだなあと驚くうちに、うれしくなってこみあげてくる笑いのこと)を、学生諸君に手渡せたらと思う。苦しいのは、ここ 10 年間、論文に書きたいことがいろいろあったのに時間の余裕がなく書けなかったことである。このような苦しみは多くの数学者がかかえていて、研究時間がない、論文を書く時間がないなど、多くの人が苦しんでいる。日本の数学者の研究環境は(昔から)ひどいが、大学院生も今苦しい状況にある。大学関係の就職口はあまりなく、しかし、大学院生は増大してオーバードクターが量産される態勢になっており、大学院生の不安不満は激しく精神状況は悪化しているように思える。どう対処したらいいのか誰も知らない。私も微力ながら事態を良くするようにがんばるつもりである。

 中村 周 教授
           

 97年 10月に、名古屋大学の多元数理科学研究科から移ってきました。もっとも、 95 年の 3 月まで、数理科学研究科に居たので、東京大学を離れていたのは 2 年半という事になります。(基礎科学科担当でした。)古巣に戻ってきた、という所なのでしょうが、前と違ってオフィスが一研になって、新しい人も増えたので、けっこう新鮮な気分で過ごしています。私のやっている数学は、タイトルを付ければ、「シュレディンガー方程式の数学的研究」と言うことになります。つまり、量子力学の基礎方程式であるシュレディンガー方程式について、関数解析や偏微分方程式の手法を用いて研究しよう、という訳です。量子力学は、現代のすべての物理学の基礎にある、と言ってもよい理論であり、数学的な研究対象としても興味深い問題には事欠かない分野です。また、様々な数学的手法が用いられる研究対象でもあります。(もちろん、すべての問題が数学として面白いとは限らないし、数学的に手が届くところにあると言う訳でもないのですが。)ここ数年は、おもに磁場がある場合のシュレディンガー方程式の構造に興味を持って研究しています。まだまだ、(少なくとも私には)理解しづらい研究対象で、イメージが掴みにくいのが逆に楽しめます。しばらくは、これで遊べそうです。 90 年に助教授になって以来、だいたい年に 平均2 回くらい、それぞれ 2 週間から 1 ヶ月程度外国(アメリカ、フランス、デンマーク等)に行き、研究の題材を見つけたり、論文を書いたりするのが生活のリズムになっていたのですが、子供ができて以来、なかなか維持するのが難しくなりました。その代わりに、科研費で外国人研究者招聘ができるようになったのを利用して、いろいろな研究者を数理科学研究科に呼んで研究交流しようと考えています。(今年も 2 名、フランスとカナダから招聘しました。)今年度は引越しの多い年で、研究室の引越しは、 2 月で 3 度目になります。いささかバタバタと落ちつかない日々が続いていますが、来年度は心機一転、谷島先生と新しいセミナーを始める予定です。

 一井 信吾 助教授
           

11 月に大型計算機センターから来た一井です。来たといっても、実際にはまだ掛け持ちで、本郷と駒場の間をほとんど毎日往復しています。十数年ぶりの駒場は、木々も多く、本郷とは違ったゆったりした時間が流れているように感じられとても快適です。大型計算機センターのある浅野地区は、どれもコンクリートの塊といったおよそデザインとは無縁の建物が詰め込まれた殺風景な場所でしたが、美しくデザインされた数理科学研究科の新しい建物が少しがらんとしているように感じられることに若干戸惑っています。この 10 年くらい私は、コンピュータやネットワークの現場に身を置いて、「動くネットワーク」「動くコンピュータシステム」の実現のために努力してきました。ちょうど日本にインターネットを導入し発展させていくというエキサイティングな体験をするその中にあって、ネットワーク運用管理のためのソフトウェアやさまざまな仕組みを工夫したり、新しいアプリケーションを開発したりすることで、わずかながらも社会に貢献できたことを喜んでいます。電子メールや WWW をはじめとして、コミュニケーションはコンピュータの主要な用途の一つとなっていますが、さまざまなアイディアを高度に表現し、それらを交換したり流通させたりぶつけ合ったりする中からさらに新しい思想を生み出していくという広義のメディアとしての役割が、コンピュータとネットワーク(これらを区別して扱うことは意味を失いつつあります)の最も重要な役割として一層の発展を遂げつつあります。数理科学研究の現場は、このような新しいメディアとしてのコンピュータ=ネットワークシステムを試し成長させるフィールドとして格好のものと思われ、私が数理科学研究科の所属することになった意義はそこにあると理解しています。私は今後もあくまで実際にマシンを動かすことによってコンピュータやネットワークの可能性を追求していきたいと思っていますが、駒場の落ち着いた環境の中で少しゆっくりと来し方・行く末を考えることもできるのではないかと期待しています。数理科学研究科の多くの方々とはかなり異質な存在ですが、お付き合いのほどどうかよろしくお願い致します。

 麻生 和彦 助手
           

 はじめまして。 97 年 10 月 16 日付で京都大学理学部地球物理学教室より転任してきました麻生です。以前の職場では、 (1) 地球物理学分野の静止画像データをアニメーションで表現しプレゼンテーションする手法の開発、 (2) オフラインでやり取りされていた遠隔研究施設・観測所とのデータのやりとりをオンライン化するためのネットワーク構築、 (3) 理学部事務室、図書室の電算化、 (4) 教室内および理学部の計算機、ネットワークの管理業務が主な仕事でした。この計算機、ネットワークの管理業務ですが、管理者として就職した平成元年当時は、管理者用の良い日本語解説書がなく、周りに使っているユーザも少なく、その上購入したメーカーの SE も素人で、唯一頼りになるのは付属の分厚い英文のマニュアルだけという環境の中で、インストールひとつをとっても四苦八苦しながら計算機と格闘するという事態でした。現在は、書籍やホームページ等により必要な情報が手軽に手に入れることができるようになったので、 10 年前のように単なるインストール作業などで苦労する事は起こらなくなり、その点において管理は楽になったようにみえますが、一方でネットワークの爆発的な発達のおかげでネットワーク管理の複雑化が進み、またいままであまり考える必要のなかったセキュリティに対する対応という大変かつ重要な管理が必要になって来ています。このことが数理研究科において、これからのネットワークに必要な管理業務の構築と、数学分野における情報計算機環境の構築をテーマにして考えて行きたいと思っています。今後とも宜しくお願いします。

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数理科学研究科公開講座催される

 毎年恒例となった数理科学研究科公開講座ですが1997 年度は解析班が担当し、無限次元の対称性――― 作用素環をめぐる話題と題して 11 月 15 日 ( 土 ) の午後 2 時から 6 時まで数理新館 1 階 117 号室で 4 つの講演をおこないました。出席者数は 87 名でうち高校などの教員 8 名、一般社会人 17 名で他は大学関係者でした。残念ながら高校生は 0 でしたが広報の事でお世話になった数学セミナーの編集部の女性記者や講師である浅枝氏のご家族が大挙参加されるなど幅広い参加者を集めることができました。講演は泉さんによる、ベクトル空間の定義から始まる関数解析入門、河東さんの 2 次行列をもとにして無限サイズに至り、分数次元を初等的に説明してしまう巧みな講演、中神祥臣さんによる量子力学から作用素環論にいたる歴史的背景の紹介、そして最後は初の女性講演者で修士院生である浅枝さんによる組紐理論と作用素環の深い関係を示す熱い講演で締められました。

(片岡 清臣 記)

  

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Topics

幾何学模型を数理科学研究科第T期棟ロビーで展示

 数理科学研究科所蔵の幾何学模型が、東京大学創立 120 周年記念 東京大学展「学問のアルケオロジー」に、昨年の 10 月から 12 月まで展示されたことは、数理ニュース 97-1 と号外でもお伝えしました。これらの模型は現在は研究科に返却され、先月より、一部数理科学研究科第T期棟ロビーで展示しております。ドイツ製の石膏模型につきましては、これまでもしばしば紹介してきました。ロビーの向かって左側に展示されている針金模型(写真右)は 4 次元空間内の正多面体の模型です。 4 次元空間内には 6 種類の正多面体が存在することが知られていますが、この模型はその一つで、 3 次元球面の 120 個の正 12 面体による分割を立体射影したものです。東京大学創立 120 周年記念特別展を訪れた乙部融朗氏から、模型の壊れている部分を修理してくださるというお申し出をいただきました。乙部氏は現在 74 歳で南千住の円通寺の住職をされながら、 4 次元空間の多面体の研究と模型製作を精力的に行われている方です。先日、研究科に来訪されたおりにお話をうかがったところ、この模型そのものの製作者ではないことが判明しましたが、氏の作品を研究科に寄贈していただけるとのことで、大変楽しみにしております。どなたか、展示されている針金模型の製作の経緯などご存知の方がいらっしゃいましたら是非、ご連絡ください。 (河野 俊丈 記)

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広報委員会

委員  河野 俊丈・薩摩 順吉
数理ニュース編集局 馬場 都

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