数理News 99-2

東京大学大学院数理科学研究科    11月22日発行

編集: 広報委員会

数理ニュースへの投稿先: surinews@kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp

数理ニュースホームページ: http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews


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最近思うこと
副研究科長 森田 茂之

 ほとんど三か月にも及んだ,長く暑い夏も10月になってようやく終わりました. ここ駒場キャンパスの銀杏並木もすっかり黄色に色付き,数理科学研究科の新しい建物が,すっきりとした秋の青空のもとで美しく映える日も多くなってきました.
 私自身はといえば,現在の仕事についてまがりなりにではありますが半年余りが過ぎ,少しほっとしているところです.先日は,新しく数学科に進学が内定した46名を迎えて,ガイダンスと懇親会が皆様のご協力で無事終わりました.元気のよい若い人達の顔を見るのは,本当に気持ちのよいものです.またご存じのように,来年春には何人かの新しい研究科のスタッフをお迎えすることになっています.教育・研究の体制がさらに充実することが期待されます.そのために研究室の準備などをいましているところです.このようにして,毎年新しいスタッフや学生,院生を迎え,数学科そして研究科の歴史が刻まれていくのだろうと思います.
 大学をめぐっては,いろいろな問題や大きな動きがあります.これらについてここで具体的にはふれませんが,関連して最近感じることを二・三書いてみます.いろいろな場面でよく言われるのは,「議論をつくすべきである…」とか,あるいは「理念がない…」ということです.全くその通りだと思います.しかし言うまでもないことですが,まず議論をし,また理念を持つべきなのは,当事者のひとりひとりなのではないでしょうか.これについては私自身も反省しなければならない点が多くあります.それぞれが深く考えた末の意見を出し合い,それらに基づいて建設的な議論をすることにより一段高い解決を目指して初めて,日本的なあいまいな決定過程を脱することができるのではないかと思います.
 盆栽というものがあります.松や欅といった大木の雄大で美しい枝ぶりを,ほんの数十センチの大きさの中に小宇宙のように実現させることができ,誇るべき日本の文化の一つとも言えるでしょう.しかし一方で,本来ならば大空を目指して自由にはばたこうとする葉や枝の行方を遮り,型通りの枠組みの中に押し込めていると極論することもできるかもしれません.日本の良さは大切に守りつつも,誰もが持っているはずの創造力の芽を,お互いにつみ取ってしまうようなことのないようにしたいものだと思います.そして,おおらかさと,しかし仲間うちの評価に甘んじることのない厳しさとが程よく釣り合った雰囲気の中で,将来の大木が育っていってくれたら素晴らしいのではないかと思います.

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人事ニュース

(※平成11年6月22日以降の異動一覧です。)

教官

☆転入
異動年月日氏名新官職旧官職等
11. 9. 6KABANIKHINE, Serguei 大学院数理科学研究科教授ノヴォシビルスク国立大学教授
11. 10. 1吉川 謙一大学院数理科学研究科助教授 名古屋大学大学院多元数理科学研究科助手
11. 10. 1HOFFMANN, Werner大学院数理科学研究科客員教授 (平成11.10.1〜平成12.3.31)
☆昇任 (50音順)
異動年月日氏名新官職旧官職等
11. 10. 1河東 泰之大学院数理科学研究科教授 東京大学大学院数理科学研究科助教授
11. 10. 1黒田 成信大学院数理科学研究科教授 東京大学大学院数理科学研究科助教授
11. 10. 1斎藤 毅大学院数理科学研究科教授 東京大学大学院数理科学研究科助教授
11. 10. 1時弘 哲治大学院数理科学研究科教授 東京大学大学院数理科学研究科助教授
☆転入
異動年月日氏名新官職
11. 7. 1本田 ゆう子教務課大学院第二掛に採用
☆転出
異動年月日氏名新官職
11. 6. 30内城 洋子辞職

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新任教官紹介

 吉川 謙一 助教授

10月から東大のお世話になっています。それまでは名古屋大学・ 多元数理科学研究科に在籍していました。
 現在は幾何班に所属しています。この度、初めて講義を受け持つことになり、学生時代に講義をサボり続けてきたつけを感じています。(当時はあまりに未熟で、自分が講義する側に回るとは考えていませんでした。)東京で生活するのは今回が初めてで、人の多さに困惑を覚える今日この頃です。
 現在の研究対象は、解析的トーションと呼ばれる量です。修士を卒業して以来、ずっとこの量を研究してきました。(解析的トーションは Ray-Singer によって導入された後、Bismut が Quillen 計量の理論として現在に至るまで研究をリードし続けています。)「解析的トーション=判別式」という境地に達して以来、ここ数年は Abel 多様体や K3 曲面のモジュライ空間上の関数として研究しています。このような観点から研究を進めてきた結果、解析的トーションが判別式に関連した保型形式や無限次元 Lie 代数と関連することが最近わかってきました。正直に言って、現在までの理解はまだ現象論に過ぎず、今後より深い理解が求められていくと思います。ミラー対称性の帰結として、解析的トーションと Gromov-Witten不変量の等価性が従うという驚くべき予想にも、大きな興味を寄せています。たった一つのテーマですが、思いもかけずそれが様々なものと関連していたため、研究の過程で多くのことを勉強することができたと思います。東大在職中にも、そのようなテーマに巡り合えることを願っています。
 今までは1つの話題だけを研究してきましたが、それ以外にも様々な数学に興味を持っています。これまで研究上の交流が少なかった方の所にも、突然質問を抱えてお伺いすることがあるかも知れませんが、その節は宜しくお願い致します。

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客員講座

☆平成11年3月31日をもって、次の客員講座が終了した。
(1)数理ファイナンス
   客員教授  林 勲(朝日生命) 
   客員教授  田中 周二(ニッセイ)
(2)産業界における非線型現象の数理
   客員教授  石川 正道(三菱総研)
   客員教授  船橋 誠壽(日立)
   客員助教授 恩田 智彦(花王) 
(3)環境数理学
   客員助教授 小林 メイ(日本IBM)

☆平成11年4月16日から、新たに次のような客員講座が開始された。
(1)符号・暗号理論
   客員教授  岡本 龍明(NTT)
   客員助教授 三浦 晋示(ソニー)(11.10.1付けで着任 )

(2)画像・数式処理と幾何学
   客員教授   清水 保弘(日本ユニシス)
   客員助教授 阿原 一志(明治大学)
   客員教授   徳山  豪 (日本IBM)(11.8.31付けで辞任)

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計算情報室からのお知らせ

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ホームページ紹介

大学院掛  http://adm.ms.u-tokyo.ac.jp/groups/daigakuin/
理学部数学科  http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~gakubu/

上記のホームページはサービスで試みに行っております。 ご意見、ご感想があれば織田(内47026)までご連絡下さい。

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数理の恒例行事
数理科学研究科では、懇親会が年何回か 行われる。7月のパーティーの一ショット 10月に行われた数学科進学内定者(2年生)のガイダンス

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編集後記

この号で、数理Newsを年2回発行するという広報委員会の役目が果たせました。
広報に関するご意見がございましたらお寄せ下さい。(桂)

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広報委員会
委員  桂 利行・織田 孝幸
数理ニュース編集局 佐藤 真理子